くらくら!
最中注意
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慣れたとは言い難い感覚に、強張った身体の力が抜けて。
白く弾けた視界がようやく色を取り戻し始めた頃。
ぼんやりした思考のまま彷徨わせてた視線の先で、理解し難い光景が。
マスターの喉元がこくりと、た、確かに、動いた。
「マ!マスター!なっ、え、あ、あわ」
「…っちょ、笑わせんな…げほっ」
咳き込んだひとが口元を抑えるその手首を、咄嗟に掴んだ勢いで身体を起こす。
「ま、ままままさか、まさか、飲…っ」
「っ待てあはは、落ち着け」
未だ噎せてるマスターが涙混じりに笑うけど。
「おち、落ち着けない、です、よ…っ」
こちらとしては切実に涙を混じえたい状況だ。
目前の口の端、拭う手の甲、両方を汚す白濁。あああ…。
とてもじゃないけど見てられないのに、視線が逸らせなくて体温ばかり上がる。
「な、な、なんで…」
「なんでって…口に出したのおまえだろ」
「!!…し、死にたい、です」
ばたりとシーツへ倒れた俺に、遅れてついてきた腕が視界の左右について。
「おまえベッドでそればっかり言ってるな」
覗き込んでくる瞳は、どこか愉しそうな色。
すぐに降ってきた唇はやっぱり案の定思った通り。
「うう、変な味、します…」
これをこのひとにって揺ぎ無い事実に土へ還りたい気分だったのに。
「そう?」
美味いけど、と返る言葉に耳を疑った。
「ま、ま、ますたー味覚おかしい、です…っ」
「なんだとー美食家の俺に向かって」
「美食家が泣きます、よー」
色の薄れた雰囲気に緊張の糸がほどけて、気を抜けたのは僅かな時で。
「俺としてはカイトに啼いて欲しいんだけど」
耳元で囁かれた声音の甘さに肌が火照って眩暈がした。
end
募マス箱より「味覚音痴」マスターでした。
カイトのってというかボカロのって飲んでも平気なのかな(・O・?
という疑問はともかくすみませんでした。
寄付して下さった貴方様へ捧げます。ありがとうございマスター!^^
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