mellow & mellow
ハロウィンパーティーの話が出たのは数ヶ月も前だ。

仲間内の発案には変わりないがアットホームな規模じゃない。

企画書を纏めて、協賛も募る。
会場は知人の伝手で画廊を借りた。

油絵の具で描かれた棺から、CGのゴーストを飛ばしたりする。

映像も照明も振舞う料理も演出は全て本職の手の中、音響で加わることになった。

要は、仕事の延長だ。


「連れて来なきゃよかった…」

歓声を掻き分けて進む会場内で、今更後悔しても遅い。

招待客は仮装が前提になる。

フォーマルな黒のスーツに、借り物のマントとスカーフ。

即席の衣装だけでも充分に、中身が良いと出来も良かった。

「マスター!」

こちらに気づいた男前のバンパイアは大分酒が入ってるのか。

周囲に取り巻いてた魔女や魔法使いを上手く交わすと陽気に笑って手を振った。

そりゃイベントが盛況で終わるに越したことは無い。

無い、けど。

「随分、楽しまれているようで…」

恋人の頬に口紅が付いてるのは頂けない。

「え?ああ」

近付いてきたメイトの頬を拭うとけらけらと笑う。

「Trick or Treatって言われて」

手持ちが無いと返したら悪戯されたらしい。

「おまえはもーこれやるから、持ってろよ」

スタッフジャケットから出した飴玉を全て押し付けた。

途端に、瞬いたメイトが意味深に瞳を細める。

形のいい唇がTrick or Treat?と紡ぐのを見た。

「何言ってんだ、それが全部だよ」

直ぐに掴まれた胸倉を訝しむ間も無く、鼻先を掠めるアルコールの匂い。

「い…ってぇ」

首筋に走った衝撃が噛み付かれたからだと、気付いた頃には。

「おまえ、ずっと妬いてただろ」

視線が痛かった、と艶っぽく笑んだメイトが満足そうな顔をした。

「すげぇ愉しい」

仕事がんばれよとか残して喧騒に戻る背を呆けて見送る。

小悪魔どころの騒ぎじゃない。

「な…っ」

なんだあの悪魔!と思わず叫んだ流れを見ていたらしく。

寄ってきた友人のスタッフが、吸血鬼じゃねぇのとか突っ込むのを聞く。

抜かれたのは血じゃない。
心臓、いや、たぶん骨だ。

骨抜きにされたんだと返す傍から惚気んなと笑われた。


Happy Halloween!!!
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