マス赤とカイト
「へぇ射的?」

喫煙スペースの一角で、見せたポチを片手にマスターが笑って。

良かったな、とわんこの鼻先で頭を撫でられる。

その何とも言えない…何とも言えなさに、奪い返そうと伸ばした手をかわされた。

「あーっもう、返せ!」

「お揃いなんですよー」

「ああ、ホントだ」

じゃあ大事にしないと、と俺の手に帰還したポチでとりあえず。

マスターを殴った途端、アカイトのばか!とカイトのポチに殴られた。

「大事にして!」

おまえもな、と喉まで出掛かった言葉を呑んでまで頷いたのは。

さっきまでにこにこしてたカイトの顔が今にも泣きそうだったから、だけどなんか腑に落ちない。

「しかしまぁ得意だよなあいつ」

狙い落とすの、と笑ったマスターが伸びた灰を灰皿へ落す。

「そうなんですか」

「ああ、大人しいタイプは特に」

「なぁ…それ射的の話、だよな?」

「あ、戻ってきた」

カイトのマスターの両手から出店の食べ物を受け取って。

「他に何の話があるんだ」

「え、いや別に…」

聞き返した問いに逸れた視線を訝しむ間に、背後で笑ったマスターが煙草の煙で噎せた。


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