マスカイと赤
「あ、射的」
足を止めたマスターに倣って覗いた屋台の壁一面に、並ぶおもちゃとお菓子。
「カイト、どれがいい?」
「えっ?!えっと…」
なんでもいいよ、と返る笑顔に慌てて景品へと視線を流す。
ど、どうしよう、マスターが、俺に…
せっかくだから形に、うん、残る方がいいな、と迷ってるうちに。
「あ!あれポチっぽい!」
アカイトが指差した犬のぬいぐるみは、言われてみれば確かに。
「ほんとだ…」
「あれにする?」
「は、はい」
俺が頷いた数分後には、ポチに良く似たわんこが手元にやってきた。
「俺!俺には?」
「分かってる、分かってるから、引っ張るな」
同じのまだありますか、とマスターが声を掛けた屋台のお婆さんが笑って。
出してくれたポチも棚に並んで直ぐ落ちた。
「俺…初めておまえを尊敬した…」
「そうか…俺は喜んでいいのかな…」
アカイトの手にもお揃いのわんこ。
ど、どうしよう、まだ来てからそんなに経ってないけど。
なんだか既に充分過ぎる気がする。
「もう帰ってもいいかもしれない…」
「「えっ?!」」
呟いた独り言に、ちょっと前を歩いてた二人が凄い勢いで振り返った。
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