ドリーム&ドリーム
触れた俺の方がびっくりした。


瞠るように開いた瞳は、真っ直ぐにこちらを見てる、筈なのに。

どこか目が合っていないような感覚で。

伝わる肌の冷たさも、青白い顔色も。
気にするところが多すぎて咄嗟の言葉が出て来ないまま数秒。

こちらをじっと見上げてた深紅の瞳が唐突に、ぶわりと溢れた涙で揺らぐ。

「な…っえ?アカイト?」

それにつられて俺も大いに動じて揺らいだ。

「おまえなんか好きじゃない」

直後に第二波。高いな…!

「…って言った」

「え」

足された小さな呟きに暫し呆けて、やり過ごした波の向こうに何か悪い余波を感じる。

そうゆう予感に限って案外。

「…誰が?」

「おまえが」

当たったり、するもんだよな…やっぱり。

まだ上手く頭が回ってないのか、アカイトが無防備に傷づいた顔をする。

瞬きと一緒にぼろぼろ落ちる雫を眺めて、何というか俺は困った。

呆れる、笑う、怒る、喜ぶ?どれにするか。

「…それ、ほんとに俺だった?」

決められないままとりあえず、ぐしゃぐしゃに濡れてる頬を拭ってやることにした。

「俺が見間、違えるわけな、だろ…!」

何それ、嬉しい方向に解釈していいんだろうか。するけど。

ぎゅっと眉を寄せたアカイトが若干しゃくりあげつつも、いつもの調子で怒り出すから。

思わず笑い返したらやっぱりいつも通りに睨まれる。

「えーでもそれ俺じゃないよ」

だってそんなこと言うわけないだろ、と抱き寄せた背を撫でても抵抗されない。

どころか大人しくこちらの肩へ額を載せてきたりする。可愛い。

点いたままのテレビ、灯る照明、読みかけの雑誌。

ソファで寝てるアカイトは、俺の帰宅時間が遅れたときによく見る光景だけども。

魘されてたのは初めてで、焦って起こしたのがついさっき。

「こんなとこで転寝するから…」

変な夢みるんだよ、と多少叱るつもりの声音を出すと腕の中から何やらもごもご聞こえた。

何?と聞き返すと服の背を掴まれる。

「…いいから、はやく」

言えよな、と辛うじて耳に届いたおねだりに、喜ぶべきか怒るべきか、やっぱり分からないまま。

「好きだよ!」

いつも言ってんだろ、なんでそんな夢をみるのか俺にはちっとも理解できないと捲くし立てた。

その直後、もっと言え、と返ったアンコールの方が夢なんじゃないかと思って。

覗き込んで確認した真っ赤な頬を抓んでみたら、何しやがんだと即座に殴られた。夢じゃなかった。


end
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