マス赤
「煙草か俺、どっちとる?」
アカイトがまたなんだか懐かしい遊びを仕入れてきた。
「なに…究極の選択?」
帰宅早々の玄関先で笑い返すと、不満気な顔をされる。
「…おまえにとって今の二択は究極なのか」
「まぁ…クセになったら手放せないって意味では…」
究極かなぁ、と告げた廊下で、ぽかんと呆けたアカイトの額に口付けて。
立ち寄った寝室で脱いだスーツの上着をクローゼットに掛ける頃ようやく。
「そおゆうのはいいから!どっちか答えろ!」
「そーゆーのって何だ…」
ばたばたとやってきたアカイトに真っ赤な顔で怒られるけど。
前者を選べば地味にしつこく拗ねるだろうし、
後者を選べば恐らく禁煙しろって流れになるんだろう。というかそれが目的なんだろう。
どちらを選んでも分が悪いなぁと苦笑して。
「なんて言って欲しいんだ?」
丸投げしておこうと、ベッドの淵へ腰掛けてアカイトの手を引く。
「え…」
俯くと丁度目が合う体勢に狼狽えた深紅の瞳を見上げた。
「…あー…だから…」
「うん」
自分で考えろ、とか返せばまた選択権を投げられるのに。
すっかり怯んで染めた目元は可哀想で可愛い。
このまま済し崩すのも有りかな、と抱き寄せた身体をベッドへと寝かせたあたりで。
「な、わあっ馬鹿!やだ、カイト!カイト居る!」
「…え?」
泣き出しそうな勢いで焦ったアカイトとほぼ同じくらい、
真っ赤な顔したカイトをリビングで見つけた。
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