自覚無自覚
「大体、メイトはだなぁ」

そろそろ始まるかと思っていた矢先の常套文句だったから。

「…おい、なに笑ってんだ」

そりゃ不可抗力だ、とは思うが相手は呂律の怪しい酔っ払いだ。

ご立腹のマスターに恭しく謝って、俺が何だって?と話の先を促すついでに。

床に転がるワインボトルはソファの影へと隠しておいた。

今更セーブさせたところで既にもう、明日の二日酔いは確定事項だろうけど。

これ以上は止めておくに越したことは無い。

「じかくが足りない」

「自覚ー?」

「俺に愛されてるってゆう」

「…へぇ」

果たしてこれは絡まれてんのか、口説かれてんのか。

毎度のことながら、解釈に悩む酔い方に結局笑うしかなく。

真面目に聞けとか凄まれても、ひとの膝を枕にしてる時点で、なんの威圧も無い。

が、威力はあるのが厄介だな、と溜息をついた。

「聞いてんだろ、ちゃんと」

酒の力でいろんな箍が外れてる。
駄目な大人の髪をおざなりに梳いてやると満足したらしく。

熱っぽい頬を緩めて、へらりと幼い顔をする。
シラフだったら考えられない表情に呆れて笑った。

「メイト好きだ」

「あー」

「メイト大好きだ」

「ああ」

「結婚してくれ」

「届け持って来い」

「事務的だなー」

浮いた言葉が欲しいわけじゃない。けど、まぁ酒の肴に悪くもない、から。

止めるのが遅かったか、と気づいた時には大抵。

「おまえが俺だけ見てればいいのに」

弱いくせに飲みたがる奴の声音が、甘ったるい熱を孕んだ後だ。

数時間後の朝になったら、覚えていてもいなくても、こんなのは酔った戯言で終わる。

そういう逃げ道を用意しないと束縛できない、しょうもないところも含めて。

「…見てんだろ、いつも」

自覚が足んねーのはどっちだ、と苦笑して深く息を吐いた。


end
募マス箱より「酒好き(でも弱い)」マスター×メイトでした。
「呆れながらもちゃんと介抱してあげるメイト、そんなメイトに甘えるマスター。甘えられたらついつい甘やかしちゃったりして、結局は惚れた弱み」
とのことだったのでそんな感じで書いてみたけど、介抱…してないなー!すみません!
寄付して下さった紅子様へ捧げます。ありがとうございマスター!^^

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