請求を要求
「俺…何か、したかよ」

今まさに、俺が聞こうとしてたことを、アカイトに言われて面を食らった。


普段から、一緒に居る間中ずっと干渉し合ってるわけでもない。

お互いの性質上、好き勝手に過ごすことも多く。
会話が途絶えたら気まずさが漂うような関係でも無い、から。

アカイトの様子が変だ、と気づいたのは帰ってきてから暫く経った後だった。

一緒に飯を食ってるときも、俺が風呂から上がった後も。
意味深な視線を感じた気がしなくもないと、今になって思い至って。

反射的に自分の素行を振り返っても、原因は見当たらずに。

直接本人に聞こうと思ってた矢先だった、のだから。

俺が自分の非を探すならまだしも、
アカイトが思い詰めた表情をする必要は全く無く。

「い、言われないと、わかんねぇ俺…」

ましてや、瞳に涙を溜める必要なんて尚更で焦った。

「いや、ちょ、待て」

なにがどうしてそうなってるのか分からないまま、座る距離を詰めて髪を撫でる。

「別に俺、怒ってないけど?」

泣きそうなのを耐える為にか思いっきり顰めてる眉の間に口付けた。

途端、瞬いたアカイトがぽかんと呆けた顔をした。

のろのろと上げた片手で今俺がキスしたあたりに触れる仕草を眺めて漸く。

「あー…そうか」

辿り着いた解答にこちらとしては笑うしか無かった。

帰宅直後の癖になっていたことを今日は忘れていたかもしれない。

したらしたで鬱陶しいとか怒るくせに。
しなかったらしなかったで、変に悩んで気にするあたり。

「おまえは、ほんとに…」

「な、なんだよ!」

「めんどうくさくて手が掛かる」

「な…っ」

けど、そこが飽きないし可愛くて仕方ない。

前言を真に受けて神妙な顔したアカイトに笑って。

明日から、ただいまのキスは請求制にしようかと抱き寄せた耳元に告げた。


end
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