マス赤
いつの間にか居ない日もあれば、一緒に飯を食う日もある。

今月に入ってからほとんど前者だったけど、
今日は久しぶりに簡単な朝食を向かい合って食べた。

埋め合わせは朝からスタートなのかとぼんやり思って、ついて行った玄関先で。

「うちにも買ってこようか」

振り返ったマスターを見上げた。

「…何を」

「ツリー」

気に入ったんだろ?と意味深に笑われて直ぐ、火照った頬の温度を確かめるように撫でられる。

「いらない!」

連日向こうに行ってた意味が他にあることくらい、分かってるクセに。

わざわざ言うあたり、性格が良いとはとても言えない、というかイイ性格だな本当に。

とは思うけど、掌を払うだけの意地はもう無い。

「じゃあケーキ買ってくる」

「食えないだろ!」

俺もおまえも、と顔を顰めて足してる間にも、こめかみあたりに口付けられる。

「じゃあ何が欲しいんだ」

会社用の匂いがする腕に抱き寄せられて、耳に届く優しい声に、どうしようも無くなった。

腹立たしいのか泣きたいのか訳が分からなくなる。

「おまえが居ればいい」

勢いで口走ってから我に返って顔を上げると、瞬いたマスターが真剣な顔をした。

「悪い、もっかい言って」

聞こえなかった、と実に白々しい。

誘導尋問だったと気づいたのは微笑まれた後だ。こいつはそういう奴だった。

「もうもう、いいから早く行け!」

「早く帰って来いだろーそこは」

可笑しそうに笑ったひとの背を押す。

そんなのだって全部、今日に限らず大前提なのだから、分かってる奴に言ってやる必要は無いと思った。


Happy Merry X'mas!
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