青と赤
「そのカオ、やめろ!」

「えっ」

思いっきり顔を顰めたアカイトに、文句を言われるほどの顔をしてたんだろうか。

と、両手で撫でた頬は確かにちょっと緩んでる気がして、結局また笑ったらクッションが飛んできた。

アカイトの直ぐ物を投げる癖、年内になんとかならないものかな…

なんて見事に命中した額を押さえて考えていられたのも僅かな間で。

自然と視線はチカチカ瞬くリビングの隅へと動く。

「こないだマスターと飾ったんだ」

「もう100回は聞いた!」

「うそだ。まだそんなに言ってない」

「…まだってなんだもう…」

勘弁してくれ、と続いた声も、ソファに寝転ぶ様子も、なんだかお疲れのようだったので。

なにか淹れて差し上げようかとラグから腰を上げる。

というか聞きたくないなら、来なきゃいいのにとは思うけど。

アカイトが来なかったらこちらが行くのだから、結局は一緒か。

12月に入ってから何かと忙しいマスターの帰宅時間が遅いのは、うちも隣も変わらない。

けど、24日は早く帰って来るって言ってたのも同じみたいだから。

日増しに不機嫌度が上昇中のアカイトもなんだかんだ毎日ツリーを眺めに来る。

その日を楽しみにしてるのはアカイトだって俺と同じだ、と笑って。

できるだけ美味しい珈琲を淹れてあげよう、と緩みがちな頬を引き締めた。

彼のマスターが淹れるのと同じ味にはならないけれど。


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