マスカイ
クリスマスツリーを買った。
どうせなら思い切って立派なやつにしようと思っては、いたけど。
「ちょっとこれは…」
流石に、はりきりすぎたような。
組み立てたばかりのツリーはリビングの一角を陣取って、何やら異様な存在感を発してた。
これが同世代の男友達宅に置いてあったら、
疲れてんのか?と労って思わず酒に誘うところだ…なんてぼんやり自嘲してる間に。
「わあ…」
すごい、と聞こえた感嘆に振り向くと、ダイニングとの境界に呆然とカイトが立ってた。
「あ〜カイト、待った」
まだなにもすごくない。
素っ気無い木で既に、上気してる頬に笑って手招く。
「ちゃんと飾ってから驚いて」
「あ、う、あ、はい」
ライトもオーナメントもそれこそ驚くほどに種類があって迷ったけれど。
シンプルなグラスボールだけでなく、見目に楽しいものも選んでおいて正解だった。
「かわいい…」
手乗りのトナカイを見つめて笑うカイトのほうがずっと可愛い。
ふたりしてツリーの前にしゃがんで、箱から出した飾りを床に散らかしていく。
「ギフトボックスと、くつ下と」
「サンタ」
「うん」
瞬いた瞳が真剣にこちらの指先を追うのに笑った。
こんな反応が見れるなら、同情で誘われた酒の席でも惚気て帰って来れると思う。
なんて結局開き直るから、こちらの原動力は日増しにハンドルが利かなくなってく。
けどクリスマスなら。
多少やり過ぎたって、とか口実が作れるあたり。
イベントってのは便利だな、と天辺用の星を手にして苦笑した。
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