シックショック
「おまえばかなのに…」

唖然と瞠った深紅の瞳に、どう対応すべきか迷って。

「…うん…」

それ迷信だけどな、と苦笑するより先に堰とくしゃみが出た。

アカイトが俺を馬鹿だと言う理由のひとつに、『俺がアカイトを好きだから』が含まれている限り。

他にどんな要素が混じっていたとしても、抱くのはもどかしい愛情でしかなく。

おまえのがずっと馬鹿だよ、と余計なことを口走る前に笑って誤魔化すことにしていた。


朝起きた時点で既に、気づいた喉の違和感は、
今までの経験上、何が起きたか分かってはいたんだけど。

今日の予定的にも無視したくて家を出たのに。

昼を過ぎたあたりから本格的に悪化の一途を辿り、
見兼ねた上司のお言葉に、甘えて帰路を辿ったわけだが。

「油断してた…」

着替えに立ち寄った寝室について来たアカイトが、背後でぽつりと呟くそれに笑って。

「いやそれ、俺の台詞…」

振り返って直ぐ続く言葉を呑んだ。

「…なんて顔してんだ」

おまえのが具合悪そうだな、と柔い頬を撫でたついでに念の為。

「風邪くらいじゃ死なないよ」

足したフォローの後半で、びくりと強張る表情に、しまったと内心で舌打った。

上着を脱ぐのもそこそこに、抱き寄せた頭を腕の中に収めて撫でる。

「薬飲んだし、直ぐ治る」

「…でもおまえ熱い」

「直ぐ下がる」

「直ぐっていつだ」

返る声音の不安定さは、多少期待してた筈なのに。

実際耳にしてしまえば、募るのは不甲斐無さでしかなく。

普段通りのアカイトが恋しくなるんだから勝手なもんだ本当に。

「ああ、もう元気だせ」

お願い、と出した声音が些か切実すぎたのか。

腕の中で身じろいだアカイトがバツが悪そうに顔を顰めた。

「…おまえに言われたくない」

熱がある俺よりも、じわじわと火照った目元に愛しさが増す。

「だよなぁ」

ちょっと泣きそうになったのを誤魔化す為に笑い返した。


end
ネタは同じで違う話の青版こちら・v・)つ
[歌へ戻る]

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -