weak & week
「寝たくないな…」

翌朝を平日に控えた前夜にしては、夜更かしが過ぎる時間だ。

発言に反してテレビを消したマスターは就寝の準備に腰を上げた。

意にそぐわなくてもいい加減、寝ないとまずいと悟ったらしい。

零れた独白は最後の悪足掻きなんだろう。

寝なさい、と急かしてくれるひとが居ないと駄々も叱咤も全てセルフで忙しいな、と少し笑った。

「いい大人が何言ってんの」

彼の親にとってはいつまでも子供なんだろうが、生憎ここは実家じゃない。

「男は幾つになっても少年の心をだな」

「ああ、その話は今度聞くよ」

返る弁明を遮ると眉を寄せたマスターが薄く笑った。

つれないなぁと呟いて寝室へ入るひとの後を追う。

「つれてやったじゃない」

この5日間。

金の次は銀って発想は安直だけど嫌いじゃない。
暦が生んだ今年二度目の大型休暇は、終ってみると呆気ないとは思うけど。

充分に、休息も堪能もしたはずだ。

「まぁそうなんだけど…」

手を引かれ潜ったベッドで、待つ間も無く照明が消えた。

まだ足りないと言うのは欲深だ、とは思うのに。

このまま朝が来なきゃいいのに、と願っているのは恐らく。

マスターよりもこちらの方が切実だ。

同じ場所で同じ時間を過ごす味を占めてしまった今。

数時間後の玄関先で彼を送り出したあとの時間を、味気なく思う。

「でもまぁ2日行ったらまた休みだから」

宥めるような声音を耳に、抱き寄せられた後ろ髪を梳かれたときようやく。

誰のための悪足掻きだったのか気づいた。

どうせバレているのなら、もっと分かり易く駄々を捏ねてやれば良かった。

なんて出来もしないことを考えながら、大人しく目を伏せた。


end
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