try to try
「どうしても?」

アカイトは最早拗ねた顔になっていて。

「どうしても」

俺も疲れて溜息が出た。

エンドロールが流れてから何度も繰り返してる問答に、降りる沈黙は重い。

2時間前、抱いた杞憂は今や多大な後悔になっていた。

たまたま点けてたテレビで流れた映画は数年前に上映したもので。

天使や悪魔とすったもんだしたりする非現実的な話だった、けれど。

主人公は過度の喫煙者で、肺に病を患う無駄にリアルな設定があった。

「…お、俺が止めろって言ってもか」

「…。」

惚れた弱みがある手前、その台詞はかなり痛い。

アカイトの頼みなら頷きたくなる気持ちも無いとは言わない、けど。

「他のことならなんでも聞くよ」

でも禁煙は無理だ、と続けた途端、じわりと滲む深紅の瞳に慌てた。

「あ、のな、さっきの話はフィクションであってだな…」

というか、止めようと思って簡単に止められたら世の中に喫煙者は存在しない。

少なからず害はあるだろうなと分かっていても手放せないのは、

「あーえーと…依存って分かる…?」

起きたら、食ったら、悩んだら、疲れたら、で条件反射的に手が伸びるのは最早それだ。

だから、仕方ないんだ、と説得しようとする前に、
腰を上げたアカイトが引っ手繰った煙草の箱をゴミ箱に放った。

「ちょ、アカ…」

「だったら俺に、依存、すればいいだろ…っ」

ばーか!と涙の混じる捨て台詞を残して逃げる背を呆けて見送る。

…禁煙を迫られたのはアカイトが初めてなわけじゃないけど。

打開策で口説かれたのは初めてだな…と一人残されたリビングで苦笑して。

悩んだ愛煙家は早速、画期的な禁煙法を試すべく、言い逃げ犯の後を追うのだった。


end
募マス箱より「ヘビースモーカーな」マスターと健康のこと考えて止めさせたいアカイトでした。
愛煙家が禁煙するのは凄い勇気がいるんだぜ、と愛煙家が言っておきます笑
寄付して下さった貴方様へ捧げます。ありがとうございマスター!^^

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