精進焦心
「今日も大好きです」

まだ半分寝惚けてるようなゆるい笑顔。

おはようございます、の後に続く毎朝の宣言に。

「…おはよう」

飲んでた珈琲が気管に入らなくなって暫く経つ。

カイトにはきっと、フランス人か、
もしくは3歳児くらいの感性が備わってるんだと思うことにした。

でなきゃ、朝に限らず昼も夜も。

そうもサラサラと、そんな台詞、俺は出てこない。

「珈琲?カフェオレ?」

「あ、う…自分でやります」

覚束ない足取りで向かいの席についたカイトへ声を掛けると腰が浮くけど。

「いいよ、座ってな」

それを制してキッチンへ立つ。

「まだ眠いなら寝てればいいのに」

「…ねむ、くない、です」

ゆるく握った手の甲で目元を擦ってる割には、たどたどしい呂律に笑って。

「はい、どうぞ」

牛乳で割った珈琲を食卓へ乗せる。

「ありあとう、ございます…」

律儀に頭を下げたカイトが、両手でマグカップを掴む。

寝起きのぼんやりした瞳とか、片側だけ跳ねてる髪とか。

カイトの全てに一々、和む朝を幸せだと思う程度には俺も。

想ってはいるけれど、思うだけだ。口に出たりはしない。

…このコみたいに、とはいかなくても。

伝えたら少しは、喜ぶんだろうか。

「…なぁカイト」

「あい」

間の抜けた返事に笑って、まだ寝惚けてる今なら、と。

「今日も…カイトが好きだよ俺も」

思い切って言ってみたら、
思いっ切りカイトが噎せた。

「ちょ、平気…」

咳き込みすぎた涙目でコクコク頷くその頬も耳も見事に赤い。

動揺に溢れた青藍が、またじわじわと濡れていく。

…その反応は反則だ。

おまえが、さらっと毎朝、言ってることじゃないか。
さらっと聞き流してくれ。

「な…な、で急に…」

どうしよう、と何度も瞬くカイトを眺めて。

「嬉し、くて死にそうです…」

それはこっちの台詞だと言える勇気は流石に無いけど。

「今日は、なんか特別な日、ですか」

あまりにも真剣に問い返されて、
俺もちょっと頑張ろうとは本気で思った。


end
募マス箱より「いつも「マスターが好きです」と言ってくれるカイトみたいに簡単に好き好き言えないけど本当は言いたい」マスターでした。
言いたいなら言っちゃいなYO!ってなってすみませんでした。
寄付して下さった貴方様へ捧げます。ありがとうございマスター!^^

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