4人
お互いの性質が分かってるだけに、隣室へは直接行かず。

携帯で呼び出したふたりは思いの外あっさりと自室へやってきて、並んだ夕食を囲む。

料理で選んだと言っても過言では無い旅館だ。飯も美味いが酒も美味い。

「温泉どうだった」

「あー良かったよ、特に露天」

後で行こうな、と呼びかけられたアカイトが顔を顰めて直ぐ。

「俺、カイトと行く」

隣から向かいへ視線を移した。

「何をそんなに警戒してんだ…」

「自分の胸に聞いてみろ」

「…思い当たる節しかない」

困ったな、と悪びれる様子もなく笑った友人がビール瓶で殺されかけたのを慌てて阻止した。

「あーもーおまえら落ち着いて飯が食えないのか!」

「おまえが一番煩い」

「俺カイトと寝る!な、カイト聞いてんのか」

微笑ましいけど了承出来ない発言に、隣を見れば。

「あ、う、うん…?」

ぼんやりしてたカイトがよく分かってない顔をして、アカイトに溜息をつかせた。

ちょっとさっきの脅しが効きすぎたか、と漏れた苦笑に刺さる視線が痛い。

「あー悪い…思い当たる節ある」

「まだ何も聞いてねぇ」

自己申告に顔を顰めたアカイトが、カイトを連れて温泉に向かう頃には、食事もひと段落していた。

静かになった室内で向かいのグラスにビールを注ぐ。

「おまえ、今日はあんま飲まない方がいいんじゃないの」

苦笑でされた忠告に、おまえもなーと苦笑を返す、けど。

「家かおまえん家以外で飲んだの久し振りだ…」

「俺も」

「だよな…」

明後日からは普通に仕事だ。

「「あー…帰りたくねぇな…」」

ハモった嘆息に笑うしかなかった。


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