マス赤と青マスタ
「おまえ、遅い!」

朝日を浴びる我が家の隣で、インターフォンを押した途端。

家主より先に出てきたアカイトに抱きつかれたから抱きしめ返した。

「いい子にしてた?」

こうも予想通りに事が運ぶとなんでこんなに愉しいんだろうな、と。

睡眠の足りてない思考で思う。

「…っおまえも、疲れてるかもしれないが…」

俺のがもっと疲れてるぞ!と腕の中から聞こえる涙声に癒されつつ。

「おーお帰り」

「ああ、急に悪かったな」

漸く出てきた友人に心からの笑顔を返した。

「黒!なに、おまえ、何を企んで…」

「嘘、顔に出た?」

疲れてんのかな俺…と片頬を擦る間に、見上げてきたアカイトと目が合う。

濡れたままの深紅の瞳が何かを悟ったように揺れるから。

「ほら、あれだ、可愛い子には旅をさせろって言うだろ…」

可愛いなら甘やかさないで、世の中の辛さを経験させたほうがよい。

という先人の偉大な教えだ、と微笑んだ。

「おまえ、ホント、におまえ物は言いようだな!」

私利私欲に使いやがって!と返る的確な反論に感心する。

「凄い、聞いたか?賢いこの子」

「おいちょっと待て、色々待て」

うちが世の中の何だって?と顔を顰める友人に苦笑して。

「まぁ…いろんな人が居るよなって言う」

教え?じゃないかな…と諭す間に。

今起きて来たらしいカイトが廊下の向こうでまだ眠そうな瞳を擦った。

「ああ…アカイトやっぱり寂しかったんですね」

未だこちらに泣きついたままだった状況を見て、可愛らしい笑顔をみせる、その純粋さに。

「おまえ…」

あの子の白さは穢すなよ、と無意識の忠告が口をついて。

「「おまえが言うと腹が立つな!」」

腕中と向かいから天文学的な確立だろうシンクロ異論が起こった。


end
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