マスカイ+赤
「愛してるよ」

浴室から戻った途端、マスターがアカイトの目を見て言うから。

「な…」

風呂上りのカップアイスを床に落とした俺の隣で。

「は…?」

アカイトがミネラルウォーターのペットボトルを落とした。

「あとなんだっけな、えーと」

親指以外広げた右手を眺めたマスターはソファに凭れたまま、ああそうだ、と人差し指も折る。

「適当に言う事聞きなさい」

適当って何だよな、と求められた同意に、ついて行けなかったのは俺だけらしく。

「連絡…来たんだな?」

何か察したらしいアカイトは、拾ったペットボトルを…

「投…っ」

投げちゃだめ、ぜったい!が間に合わなかった。

「分っかり難い伝言すんな!」

「アカ…っアカイト!!マスターに何て…何てことを…っ」

「カイト、大丈夫、大丈夫」

当たってない、とマスターから返る安否に、引いた血の気が少し戻って。

「あわ、よ、よかった…」

深く吐いた安堵の息を、またゆっくりと吸い込んでから、アカイトを見た。

「いや、だってこいつの言い方が」

「…。」

「…ちゃ、ちゃんと狙いは外したぞ」

「…。」

「……おい、カイトが怖い顔する」

どうにかしろ、と背後に回り込まれたマスターが笑って。

「カイト、ホントに大丈夫だから」

許したとしてもっ今日と言う今日は見逃すもんか…!

「甘やかしちゃだめ、ですよマスター!」

「ああ…だよな、ごめん」

「弱っ」

いいからちょっとここに座りなさい、とアカイトに近くのラグを指差した。


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