まだまだ
「ねぇ…CM、終わったよ」

特有のBGMが途切れているのに気づいて。

息を継ぐ間に声を掛けると瞬いたマスターがテレビを眺めた。


「…ああ、ホントだ」

どこかバツの悪そうな顔で笑って再度口付けられる、けど。

話の流れを区切る間に始まったキスを、これ以上する必要があるのだろうか。

さっきまで観てたドラマはこうしてる間にも話を進めている。

押した肩は隣ではなく、いつの間にか真正面にあって。

「観なくて、いいの」

乗り上げていたらしい膝の上で問うと、また瞬いたマスターが少し笑った。

肯定の意味らしいキスが返る。

よくもまぁ飽きないもんだと思うけど、こちらとしても人のことを言えたもんじゃない。

作り話を観るよりはずっと続きが気になるし、第一気持ちいい。

真似するのに夢中になってるうちに、背中にひやりと外気が触れた。

体温は上がるばかりだったから丁度いいと思う。

心地よさにぼんやりし始めたころ不意に、背を撫でる掌がぴたりと止まった。

どうしたのかと見上げた先でマスターと目が合う。

「…抵抗、しなくていいの?」

言われた意味はよくわかんなかった。だからただ瞬いた。

「…い」

「い?」

どちらかを答えなくちゃいけないのかと、酸素の回ってない頭で思って。

「いくない…」

わざわざ聞くぐらいなのだから、と選んだ答えにマスターが笑った。
呆れた、というよりは、しまった、に近い苦笑だった。

「…じゃあ早く、そう言わないと」

言わないと、どうなんだ。

そう、聞くより先に背中で動いた掌がこちらの服を整えていて、額に軽く口付けられる。

「寝ようか」

いつの間にか熱っぽい辺りの空気を冷ますような声音を聞いて、やっと。

このひとが求める終着点が、僕が思うよりずっと先にあったのだと。

気づかなかった自分に呆れた。

冷めてきていた体温は、またじわじわと上がる。
身の内も外も焦がされる気がした。


end
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