まだまだ
「ねぇ…CM、終わったよ」

塞いでいた唇から零れた色の無い発言に瞬いて。

ミクオ越しに眺めたテレビ画面では、さっきまで観てたドラマが再開していた。


「…ああ、ホントだ」

空いた間を埋める為のキスだと、悟られていたことに苦笑したい心境で、一応の相槌は打つものの。

再び口付けると肩を押される。
抵抗、というよりは注意を促すそれに仕方なくまた顔を離した。

「観なくて、いいの」

皮肉を籠めるわけでもなく、単純な問いなんだろう。
表情がいつもと同じ淡々としたもので少し笑った。

きっかけは確かに、話の腰を折る間だった、けれど。

隣に居た華奢な身体を膝の上に乗せた時点で、そちらへの興味はとうに失せてる。

返事代わりに数度目のキスをして、探りを入れた舌先は拒まれることも無く。

拙いながらも応えるような仕草さえみせるから、つい。

流れ的な癖で脱がし掛けてた服に気づいて、手を止めた。

「…抵抗、しなくていいの?」

膝の上に抱えても、視線を下げなければ目が合わない。

「…い」

「い?」

大きな瞳が、身体年齢と歳相応なあどけなさで瞬く。

「いくない…」

どこか他人事染みた返事に呆れて笑った。
勿論自分に対して、だ。

「…じゃあ早く、そう言わないと」

妙に大人びたところがあるだけに、直ぐ見誤ってしまうけど。

身体的な成長は無いにしろ、精神的にも、まだ。

雰囲気に呑まれてるのにも気づけないこども相手に、これ以上、何をしようと。


たくし上げてた服を戻して、癖のある髪から覗く額へ軽く口付ける。

「寝ようか」

健全な意味で告げた時やっと、状況を把握したらしく。

幼さの残る丸い頬がじわじわと染まっていった。


end
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