日曜日
「お花見行きたい!」
いくら休日とは言え、お昼過ぎまで寝てたマスターの開口一番がそれだった。
「…他に言う事は無いの」
呆れてついた溜息にマグカップのカフェオレが揺れる。
「花見か、いいな」
暢気な笑顔の賛同に、今更だけど、と手を挙げて。
「メイトはマスターに甘過ぎると思う」
異議を申し立てた、その数十分後には結局。
マスターのリクエストに応えたお弁当が食卓に乗った。
「愛の力ってすごいな…」
「なに、なんか言った?」
自分で呟いて寒くなる言葉を、エプロンを解いたメイトが聞き返してくるから。
「僕のお嫁さんになって、って」
大真面目に言ってみると、またおまえは、とやっぱり笑われた。
「ミクオまでマスターみたいになったら俺泣くぜ」
しかも何やら、こちらとしては笑えないことを言ってくるから。
「僕も泣きそうだ」
と返した傍から、レジャーシートが無い!とか何とかマスターの泣きが遠方より届く。
「あーもーあの人は何で直ぐ物失くすかな」
このまま騒がれるよりはずっとマシだ、と救助に向かうべくキッチンを出た、その背後で。
「おまえだってあの人に甘いじゃないか」
笑ったメイトの言葉は聞こえなかったことにした。
自覚があるだけに込み上げるこの腹立たしさは、
「決まった場所に仕舞わないからそうなるんだよ!」
「そんなこと言ったっておまえ…」
案の定、部屋を樹海にしていたマスターを叱ることで沈静させた。
end
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