マス赤(+マスカイ)
「絶対嫌だかんなっ」
って俺の意見は無かったことのように。
「今からだと近場でいいよな」
「だなーカイト、上着取ってこよう」
「は、はいっ」
ばたばたと出かける準備を始める3人を遠巻きに眺めた。
「アカイト、ほらおまえも仕度して」
「行かないぞ、俺は」
抱え直したクッションを盾に、伸べられた掌を払ってみても、気に留める素振りも無く。
寝室に向かったマスターは、上着はどれを着るんだとか暢気な声音で聞いてくる。
「俺は家に居る!」
「んなこと言って…おまえ留守番させると拗ねるだろー」
ほら、着て、と勝手に選ばれた薄手のジャケットを差し出されて顔を背けた。
「これ嫌だ?」
「そうじゃ、無くて…」
人混みが嫌だ、と告げた本音にマスターが笑って。
「まだそんなに居ないって」
多分、と続く適当なフォロー。
おまえの多分は5割で外れるだろ!と反論をする前に梳かれた髪先に口付けられた。
隙をついて奪われた盾を、見送る間も無く額や頬にも。
「アカイト」
諭すような声音を聞いて、狡い手口だ、と思う。
けれど、
言う事さえ聞いてやれば。
無駄に甘ったるい笑顔と一緒に、ちゃんとしたキスが返ることを知っているから。
「靴はー?どれ履く?こないだの?」
結局は、玄関先から飛ぶ声を耳にジャケットを羽織って。
「…こないだの」
用意された靴を鳴らして渋々外へついて出る。
「悪い、待たせた」
「いや、思ったより早かったな」
廊下の柵に寄りかかってたカイトのマスターが笑う、その横で。
目が合ったカイトがへにゃりと嬉しそうな顔をした。
お花見してみたい、と言い出したこいつが全ての元凶なのに。
やっぱり何も言う気になれなかった。
end
お隣さんでお花見を、と声が掛かったので^^
出発話ですが笑
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