募り積る
珍しく悲恋です
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何度も目にしてる光景だから、いい加減慣れればいいのに。
息苦しくなるような胸の捩れは飽きる事無く繰り返される。
「うん…大丈夫だって」
心配すること無いよ、と穏やかな声が一室に溶けて。
携帯を耳に当てたマスターが優しい顔で瞳を伏せていた。
俺には、見せることの無い甘い表情。
「…カイト」
携帯を畳んだマスターが俺に気づいて漏らす苦笑に微笑んで。
「…情けないって思う?」
首を横に振った。
マスターのすきなひとには、すきなひとがいる。
その相談役はマスターに回ってくる。
「馬鹿なことしてるって、分かってはいるんだけど…」
「…伝えないんですか」
好きだって、と言葉に出せても目は見れずに、マスターが手にしてる携帯を眺めた。
「…困らせるって分かってるとなかなか、ね」
いっそ早くくっついてくれればいいのにって思うよ、と笑う声音に視線を上げる。
そしたら諦めもつくかもしれない、って切ない顔で。
俺がいつも、思ってることを、マスターが口にする。
良くも悪くも、マスターと俺は似てた。
すきなひとがいるひとを、
すきになるところまでも。
「…上手く、いかない、ですね」
「ホントに、な」
返る苦笑になるべく自嘲が混じらないよう微笑み返した。
誰よりも笑っていて欲しいひとを、幸せにする術が自分に無い。
それに気づいてしまうことが、ひどく苦しい。
募るだけの感情は途方も無いもどかしさを連れて。
伝えられもせず、溶けて消えることも無い。
眺めた窓でふわふわと舞う粉雪は、きっと積もる間も無く雨になる。
それを少し、羨ましく思った。
end
募マス箱より「?←マスター←カイト(アカイト)」でした。
赤でもおkみたいでしたがカイトにしてみました。片思いは辛いですね…
寄付して下さった貴方様へ捧げます。ありがとうございマスター!^^
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