青と赤
「はぐれたな」

認めたら世界が終ってしまうんじゃないかと、俺が思ってたことをアカイトがあっさり言った。

「完璧に」

「念を押すの止めて…!」

見渡す境内は、どこもかしこもお正月休みの人で溢れて。

「どどどうしよう…マスター達心配してるよ…」

絶望的な気持ちの俺とは違って、アカイトはどこまでもけろりとしてる。

「どうしようってどうしようも無いだろー」

「ま、待って!どこ行くの…」

アカイトと一緒なのが唯一の救いだ、と思った傍から危うく見失い掛けて焦る。

「ずっとここに居てもしょうがないだろ」

というか人混みがやだ、とどんどん前を行く背を慌てて追った。

「待って待って、手、繋いで!」

「あ」

人垣を抜けたあたりで、アカイトが急に立ち止まるから。

「な、なに?」

思わず背にぶつかって俺も止まる。

「なぁ、あそこ道ある」

指をさされる方向に、確かに小道。

妙に生き生きしてるアカイトに嫌な予感。

「行ってみよう」

「や、やっぱり!言うと思った!」

それより早くマスター達探さないと、と言う俺の意見は案の定通らず。

すたすたと先を行く背をまた必死で追った。

「ねぇアカイトなんか怖いよここ…」

あんなに人が居た本堂が嘘のように、静かな一角は気温まで低い気がする。

小さい鳥居の左右には狐の石像。進む先はこじんまりしたお社だった。

「カイト、金持ってる?」

「ううん」

「無銭でも叶えてくれんのかなぁ」

なにを、と視線を流すとアカイトが賽銭箱の縄を掴んで鈴を鳴らした。

「今おまえが一番困ってること」

「…マっマスター達と会えますように!」

がらんがらんと響く音に手を合わせたとき不意に、コートのポケットが震えた気がした。


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