ずっとずっと
確かにちょっと疲れては、いた。

今日は忙しかったし、
妙にツイてなかったり、
帰りの電車は案の定の帰宅ラッシュで。

いや、そんなの、言い訳だな。

まぁあれだ、早い話、八つ当たりしたわけだ、アカイトに。

こいつの口が悪いのとか。
言ってることの大半が勢いだけで本気じゃないのとか。

分かってた、はずなのに。
普段なら聞き流せる台詞を、真に受けたりして。

手が出た。
いや、殴ったわけじゃなく要するに…
手を出した、のが正しい、か。

今まで抑えてた自制がすぱんとどっかにすっ飛んだ。
俺も大概大人げない。


けど、まさか。

「…っななな何、すんだよ…っ」

泣かれるとは思わなかった…

ただ触れて離れる、それだけの稚拙なキスで。

しゃくり上げた声が震えて、
いつも強気な赤い瞳は怯えたような色が乗り
涙に濡れた両頬は可哀相なくらい火照ってる。

…ああ、もう。

「泣くなー」

「泣い、て…ねぇ!」

いやおまえ、そんな顔で言われても、とは言わないであげた。

さっきまでの苛立ちや疲労とか、そんなの今やもう遠く彼方へ消えてしまって。

ぼたぼた零れる大きい雫になんだかほのぼのしたり、してる場合じゃないか。

「悪かったって…」

「!!っあやま、ならすんな…っ」

まぁ確かに。
そうなんだけど、でも。
おまえその顔は、やばい。

「それ以上泣かれると、もっとしたくなるんだけど」

「な…っ」

無碍も無く落ちて行く水滴はどこまでも純粋で、なんだか勿体無いと思う。
無意識に触れた真っ赤な頬は見た目よりももっと熱い。

これ、涙蒸発すんじゃないか
なんて、馬鹿な事を思わず口に出していて。

「な、に言…っ」

反論が終る前には再び口付けていた。

噛み切られそうで踏み込めない段階分、角度を変えて。

漸く解放出来たのは、力の抜けた弱い拳が胸を叩いてくる頃で。

「…っは、…ふ、」

ずるずるとへたり込んだアカイトへ差し出した掌は案の定、はたかれて終るけど。

「マスタ、なんか、嫌い、だ…」

吐息交じりの暴言も、今はもう、真に受けないよ?

口よりも身体のが素直なこと、知ってしまったし。

もっと知りたいとも思う。

その為なら、

「ごめんね」

「…謝るならもっと、真剣な顔しろよな…っ」

「だっておまえ、俺が真剣に話すと真っ赤になって怒…いてっ」

照れ隠しの暴力も、
相変わらずの口の悪さも、
その捻くれた性格も。


可愛いものだと大目にみるよこれからも。


ずっとずっと。


end
募マス箱より「ちょっと強引」マスターでした。
マスアカで使ってすみません…そんでやっぱり微妙な出来で申し訳ない!
寄付して下さった貴方様へ捧げます。ありがとうございマスター!^^

[歌へ戻る]

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -