ばかばっか!
「アカイトはいつもそうだ…」

俯いた頬に落ちる睫の影がちいさく震えた。

なにか言い返そうと吸った息は、
潤んだ深藍の瞳が綺麗に揺れた瞬間に、行き場を失い。

「…悪い」

上手く働かない思考で、紡いだ言葉はかろうじて音になりはしたが、力ない吐息で終わった。

「悪いなんて、思ってもないくせに…」

睫に乗った水滴が、瞬きと共に一粒零れる。

「…っ思ってる!…カイト!」

俺の視線を振り切るように踵を返すカイトの身体を、半秒遅れで引き止める。

その肩がびくりと跳ねて、こちらの鼓動もドクリと跳ねた。

「…もう一度、やり直そう」

「もう…無理だよ」

濡れた瞳は静かに床を見つめるだけで、俺を映しはしなかった。



「はーい、そこ!朝っぱらから昼メロみたいな喧嘩しない!」

「「マスター!!」」

喧嘩じゃない!一方的にこいつが!
って俺が訴える前にあああおま、すぐマスターに抱きつきやがってくそ!

「ますたぁああアカイトが!」

「アカイトがどうしたって?」

「ちがっ俺はただ」

こいつを起こしに来ただけで。

「アイスの夢見てたんですよー!なのに…っうう」

「だからもう一回寝てみればいいだろ!」

「同じ夢なんか見れないよ!わあああん」

だから、ああもうマスターに抱きつくな!

「あーはいはいアイスやればいいんだろ要は」

「マスター…!」

「な…っマスターはこいつを甘やかしすぎる!」

なんだこれはなんだこれは。
鼻と喉の奥がツンとする。もーなんなんだ。

って混乱してたら、苦笑したマスターに頭をぐしゃぐしゃ撫でられる。

「おまえにも何かやるから、泣くな泣くな」

「な…っいてねぇ!」

言い捨てた声音に軒下の小鳥が慌てて飛び立って。

今日も平和だなぁ、とマスターが呟いた。


end
タイトルまさに!(・v・
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