little by little
『クリスマスプレゼントはお兄ちゃんが欲しい』

って言ってみたのは去年の冬で。

大いに慌てた両親は弟か妹じゃ駄目かと妥協案を出した。
(しかも来年じゃ駄目かと延期までしてきた)

けど、がんとして譲らなかった、ら25日にKAITOが家にやってきた。ボーカロイドって言うらしい。

うちに来たのは髪も瞳も赤いKAITOだった。

アカイトだと名乗った彼は、自分のことを不良品だと言った。



「ごめんね、歌わせてあげられなくて」

それからもう1年経って、僕の学年もひとつ上がったけど。

残念ながらまだ、無理みたい。

「たぶん、6年生になればなんとかなると思う」

パソコンの前でふぅと息をはいて、椅子ごとくるっと回る。

ベッドに座ったアカイトと視線の高さが揃う。

「はやくアカイトの歌聴きたいのに」

すこし驚いたように赤い瞳が瞬いて、眉を寄せる。
何か言いかけた口が閉じた。彼の癖だ。

「何、気になる」

「……物好きだなと思って」

「そう?」

笑って返すと今度は困った顔をして、そっぽを向かれてしまう。

「物好き、じゃなくてアカイトが好きなんだよ」

「!!」

あ、やばい。
ばっとこっちを見たアカイトが開いた口を塞ぎに慌てて立った。

「何言っ」

「しー、大きな声出しちゃ駄目、だよ」

みんな起きちゃう、と小声で告げると掌にゆっくり息が掛かる。すこしくすぐったい。

「…おまえが、変なこと言うからだろ…っ」

「わあ…っ」

がしっと両肩を掴まれて引き剥がされた所為で、
片膝だけベッドへ乗り上げてた体勢がぐらりと揺れる。

咄嗟に前の肩を掴んだら凄く近くで目が合うから。

言うなら今だと思った。

「変じゃないよ好きだもん」

固まったアカイトがみるみる真っ赤になる。満足して笑った。

「その顔好き、もっとして、かわいい」

「〜っおま」

声、駄目だったら、とまた口を塞ぐ、触れた体温が熱い。

「…おまえに言われたくない」

掌の下で悔しそうに呟かれたことばに笑って、
それどういう意味って聞くべきか悩んだ。


『返品しろ』

とあの日アカイトは言った。
けど僕は嫌だと言い張った。

だって嬉しかった。
会えて嬉しかった。

そのまま言ったらアカイトは困った顔をして、真っ赤になるから。

もっといろんな表情がみたいと思った。

けどそれはきっとたくさん時間が必要なんだと思う。


「ずっと一緒に居てね」

手放す気なんて初めから無いんだと、
分かって欲しくて目前の首に抱きついた。

今日も対処に困ったアカイトの手は、
僕の背中で迷った挙句すこしだけ、服の裾を掴んだ。

今はそれで充分だと思って笑った。


end
募マス箱より「小学生」マスターでした。
「自分よりはるかに幼いマスターに逆らえないアカイトとか読んでみたいです」
とのことだったのでそんな感じで書いてみたけどショタっ子むずかしす!!笑
寄付して下さった貴方様へ捧げます。ありがとうございマスター!^^

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