Liar! Liar!
「大丈夫だから!」
マスターは曲でも作ってろ!と背を押され部屋へ押し込められる。
派手な音を上げてドアが閉まる瞬間に、赤い瞳が得意げな笑みを乗せた。
大丈夫だから、とやけに念を押されると、ひとは案外不安になるもんなんだよって今度教えてあげよう。
なんて考えてる間に、キッチンから届く古典的な騒音。苦笑で溜息。
あいつが、言い出したらきかないなんて今に始まったことじゃない。
ここは大人しく待機する事にして、後片付けは俺がやらせていただこう。
ちょっとした出来心だった。
『今日はマスターの日なんだよ』
なんて。大人げなく、やけに本気で芝居して。
真剣に言ってみたのは今日が4月の初日だったわけで。
一瞬呆けたアカイトは数度瞬きした後。
『まじか…』
『えっ?』
『そうか。知らなかった…』
素直に信じ…た。
それからのやりとりは光の如し。
『よし!じゃあ今日の家事は俺がやってやる』
『え!』
『そうと決まったらまず昼飯だよな…』
『ちょ、』
『何食いたい?唐辛子?』
『待っ』
『大丈夫!任せとけ!』
冒頭に続く。
俺の馬鹿。
「はぁ〜」
溜息を騒音で掻き消されながら、当たり前だが落ち着かない。
あいつって火傷とかすんのか?怪我は?あー…だめだ!
3個目の何かが割れた時丁度、大人しく待機の限界が。
キッチンに向かえば案の定、
助太刀の参戦に抗議の嵐のアカイトを宥め。
屍累々だった食器たちの亡骸を供養して、
ふたりの好みを妥協で割ったカレーを作り。
食卓に並べた頃にネタバレを。
「…っ!!!」
「悪かったって。そういう風習なんだよ4月1日は」
「それもどうせ嘘だろ!」
「ホントだって」
ああ、そんな純潔を汚された目で見られると罪悪感に胸が痛むから止めてくれ。
とか思いつつ、ゆるんだ顔は締まらない。
おまえが、俺の為に何かするなんて、なぁ。
なんて笑ってしまうと、アカイトの頬が膨らむ悪循環。ごめんごめん。
「でも、もしマスターの日がホントにあったらさ」
「ねーよ」
「だから、もし、あったら…家事とかよりも」
俺の傍に居てくれるほうが嬉しいんだけど。
そう言った途端、唯でさえ大きめの瞳がもっと大きくなって。
その頬は、髪や瞳に負けないくらい赤い。
「…っばっっかじゃねーの!」
派手な音で席を立ったアカイトが思いっきり視線を逸らす。
「俺はそんなの絶対嫌だ!!」
おまえの嘘は分かり易い。
ここで笑ったらそれこそダメだ、と堪える為に俯けば、
暫く黙ったアカイトがカタンと静かに席に戻った。
「………今日は、」
嘘、ついていいんだよな?
ぽつりと零れたアカイトの声に、
全ての自制を持ってかれた俺が。
その頬へ手を伸ばすまでコンマ数秒。
end
アカイトはツンデレ!だといいなー(・v・
[歌へ戻る]