keep it deep
ピロートーク注意
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カイトを好きになってから、
彼を俺の所有物だと思ったことは無かった。
筈なのに、なぁ。
「あ…っ…マ、スタ」
いつもより艶っぽい声。
その声が含む意味を分かってて、気づかない振りをした。
カイトの肌はどこも白いけど、内股が一番白い。
少し口付けるだけでも簡単に色が付く。
「ぁ、あ…!も…」
何度も追い詰めて、それでも終わりは与えない。
分かり易い嫌がらせに、濡れた瞳が困惑に揺れた。
そりゃそうだ、こんな抱き方したことない。
上気した頬に走る涙の跡をいくつも見つけて。
自己嫌悪に溜息をついた。
「はーもう…俺、こんな心が狭いと思わなかった」
覆い被さった耳元で呟くとカイトの肩が僅かに震える。
「ん…っマスタ…?」
「…もー何が来ても玄関出ないで、お願い」
自覚してしまえば開き直れて、情けない要求も簡単に口をつく。
「郵便屋とか宅急便とか後なんだ、出前とか?」
肘を付いて身体を浮かすと目が合って、カイトの瞳が瞬いた。
「…さっき、褒められてたろ、髪」
また、涙の乗った長い睫がぱちりと揺れる。
早く理解してくれ、と思いながら火照った頬に落ちた雫を拭う。
「えっと…あの、それって…」
「あん時、おまえは俺のなのに、って思ったよ」
あーもう、とまた大きく溜息をつくと、伸びてきた腕が首にまわって。
「…あの、えっと…嬉しい…って思っちゃだめ、ですか」
おずおずと引き寄せられた耳元が赤い。
「…だめじゃ、無いです」
「じゃあ嬉しい、です」
「…あーもーだめだ、カイト好きだ」
こいつを好きになってから、俺はどんどん情けなくなってる気がする、けど。
「俺の方が、もっと貴方を好きです」
眉を下げたカイトが笑う。
「いや、俺だね」
「俺、ですよ」
こいつがそうやって笑ってくれる限りは、まぁいいかと諦めて。
「いや俺だ」
「そこは譲れません」
誘われるままに、溺れる為のキスをした。
end
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