4人
「それでも、あいつが言い出したら飼うんだ?」
隣室から漏れる声音で目が覚めた。
ってことは寝てたのか、と見上げる天井に和の照明。…客間?
少し開けた戸の隙間から射した灯りが、簡易で敷かれた布団までの道を作って。
「…あれ…俺いつ寝たんだっけ…」
つられて起きたのかカイトが目を擦る。
呟く声音は独り言めいていたから答え無かった。
大体、気づいた時には並んで寝てたのだから答えようも無く。
問いじゃなくて良かったと再度隣室へ意識を戻す。
「だれか来てるの?」
膝をついて近づいてきたカイトが隙間を覗く。
光を映した青藍がすぐ見開いて、捉えた人物を呼び掛けた口は未然に塞いだ。
「…っま、ふたー」
手中で動いた唇にこそばゆいと文句を言うまでも無く。
「おまえな、笑うけどだったらおまえはどうなんだ」
カイトが猫でも拾ってきたらどうする?と流れた話題で、カイトが息を呑んだ。
「俺は飼わないなー」
「…カイトが泣いて頼んでも?」
「うん」
意外だ、と俺でさえ思って、カイトを見ればちょっとフリーズしてる、けど。
「だって俺、猫に妬く自信ある…」
掌から伝わる体温が直ぐに上がった。
「だよな…おまえはそういう奴だよな」
「あ、分かった、おまえが犬飼うかもって理由」
「あ、ちょい待て、ポチ起きた」
煩かったかな、とマスターが笑う。
笑って、鳴き出した子犬を抱き上げる。
しょうがないなと見せる苦笑はいつもと同じ。
いつもと同じ、なのが何故か無性に腹立って。
「おま、おまえは触んな!ヤニが移る!」
すぱーん!と開いた襖の音に驚く視線を全て無視した。
適当な理由でマスターの腕からポチを奪還した頃に。
「…これが見たかったんだろ」
いち早く覚醒したカイトのマスターが俺を指すなり苦笑して。
「うん、そう。よく分かったな」
笑い返したマスターに、ポチごと抱き締められた耳元で、可愛いと囁かれた。
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