マス赤+カイト
「なんだ、それ…」

それ、って表現が不本意だったのかどうか。
ふたりが答えるより先にアカイトの腕の中で子犬が鳴いた。

「何って犬だろ」

「…元居たところに返してきなさい」

まさか自分がこの台詞を言う側になる日が来るとは、と予想外の客を眺める。

「は」

「は、じゃなくて」

「あの…捨て犬、じゃなくてお隣さん家のポチですよ」

「え?」

持ち上げて見せられる小さいケージ。
言われて見れば首輪も付けてた。

「え?じゃねーよ」

ばーか、と一言残して室内に進む、アカイトの背を見送ってから。

「…お隣さんのポチが何でうちに?」

玄関先で取り残されたカイトに救いを求めた。

「つか、お隣って?犬飼ってた?」

「はい、先月くらいから」

「へぇ…知らなかった」

この子達の方がご近所に詳しいのはどうなんだ、と別問題まで生まれたあたりで、

「今日からご旅行だそうですよ」

一泊二日で、と何やら躊躇いがちな笑顔が返る。

「え、ちょっと、待て、あいつまさか…」

「まさか、です、多分」

うちで預かるって言ったのか!

「カイト!飯!」

リビングから飛ぶ声に盛大な溜息をついて。

「…あいつはどこの関白亭主だ」

「あはは」

餌が入ってるらしい紙袋まで持たされてるカイトを室内へ促した。


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