指南至難
裏切られた、と無垢な瞳が語っていた。


「…な、何を…」

沈黙を破ったのはカイトで、それでもその先の言葉は続かずに。

数度瞬く青藍は驚愕と動揺に溢れて揺れる。

自分の身に起きたことを理解出来てないのかもしれない。

でも、それは俺も同じだった。

「い、今のなん、ですか…っ」

だってまさか泣かれるとは思わなかった。

「…もしかして、初めて、だった?」

スカッと爽やかが売りの炭酸飲料で。


涙目で必死に頷くカイトには悪いけど…

「な、なんでわらっ笑うんですか…!」

「だって、…っあはは可愛い」

「マスター!」

「ごめんちょっと、待って」

取り合えず波が去るまでは笑って、気づいた頃には珍しく拗ねた顔したカイト。

「…珈琲だと、思ったんですよ」

「うん」

「まさか弾けるとは思わなかったんですよ」

「…うん」

「ま、また笑…っ」

何も知らないまっさらなこのコが、いろんなこと。

覚えていくのを見守るのが愉しくて仕方ない。

本当は早く、教えてしまいたい事程、手順が多く困難だけど。

「ごめん、機嫌直して」

それはまぁ気長にいこうと、口付けた頬が初々しく染まっていくのを笑って眺めた。


end
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