猶予の余裕
マス→←赤な感じで
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「俺、病気かもな…」
溜息をついたマスターが妙に深刻な顔をするから。
「は…?」
意味が分からず暫し呆けた。
だって今さっきまで普通だったろ。
普通に飯食って、普通にテレビ観て、普通に話して。
「え、どっか痛い、とか?」
「うーん強いて言うなら心臓が痛い」
「し…!」
それってそれっておおごとじゃないのか?
家にある薬じゃどうにもならないかもしれない。
どうしよう、どうしたら、どうすれば…
「あー…待ったアカイト、悪いごめん違うそうじゃない」
焦って巡った俺の思案に、掌を翳したマスターが停止を掛けて。
「まさかそんな心配してくれるとは…」
今度から言葉を選ぶよ、と感慨混じりの苦笑。
「でもアカイトは慌てても可愛いな」
「…ちょっと待て…」
「飯食ってても可愛いし、テレビ観てても可愛いし…」
どうしたらいいんだと思って、とか何とか。
へらりと笑ったマスターに投げる為のクッションを掴んだ、けど直ぐに手首を捕られた。
「気が強いとこも可愛い」
「も…ういい、もう分かった」
ああ、くそっ切り出しが違うから気づくのが遅れた。
何の事は無い、いつもの寝言が始まっただけだった。
「直ぐ照れるのも可愛い好きだ」
「もう分かったって言ってんだろ!」
「何が分かった?」
掴まれた手首はそのままに、擬音の付きそうな笑顔。
これはまずい。
まずいパターンだ。
こうなったら俺が答えるまで引き下がらない。
「だから…俺が、す、きなんだろ」
かーっと体温が上がる音さえ聞こえてきそうで居た堪れない。あーもう。あーもう。
「そう。抑えるのも結構限界だから」
早く俺を好きになって、とか。
言ってることの割りに落ち着いた笑顔が憎たらしい。
そんなこと、俺が言葉になんかしなくても。
とっくに気付いてんだろ。
俺の下らない意地なんて結局、おまえの余裕が続くまでの猶予だって。
奪うつもりがあるのなら早く止めを刺せばいいのに。
「して欲しい事があるなら何でも言って」
何でもしてあげる、と少し髪を梳くだけで離れていく指先を見送って。
この焦れったさを愉しんでるようにしか思えない笑顔に、当てる為のクッションを再び掴んだ。
end
募マス箱より「アカイト溺愛」マスターでした。
気づいたら赤も溺れてました(・v・あり?
寄付して下さった貴方様へ捧げます。ありがとうございマスター!^^
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