ニギニギくまさん
これを貰って書いたマスカイ
*****************
「何ですかこれ…」
犬にもクマにも見える顔が3つ上下に並んでる。
可愛いといえば可愛いけど怪奇といえば怪奇だと思う。
「職場のコに貰ったんだけど」
ネクタイを解いたマスターが、欲しいならあげるよ、と笑った。
「え!いいんですか?」
「何、ホントに欲しいの?」
マスターがくれるならなんでも欲しい、なんでも嬉しい、から直ぐに頷く、けど。
「どうやって使うのかわかんないです」
「取説無いのかな」
マスターもイマイチよく分かってないらしい。
「無いですね」
入ってた箱には他に何も見当たらず。
外面には至極簡潔な商品名。
「やっぱ…握るんじゃないか」
こうやって、とマスターの掌にクマ達が消えた。
「…なるほど」
「はい」
渡されたクマを真似して掌に納めてみる。
「痛っ」
「え?」
「これ、耳と鼻、が凶器です、よー」
木製だから地味に痛い。
並ぶクマの温和な笑顔が小憎たらしい。
おまえのツボ押してやるぜって顔をしてる。
「力、抜いても?」
「うう、慣れれば気持ちよくなるんですかね…」
「…。」
「…。」
途切れた会話に、あれ?ってなって見上げれば複雑な顔したマスター。
「やっぱ返して」
「ええ!な、なんで…」
「緩みきった面のクマに先を越されたくない」
「え?え…っ?」
展開についていけないまま奪い取られた彼らの笑顔を、
見たのはそれが最後だった。
おわり
[歌へ戻る]