4人
「アカイトが誘拐された」
真剣な顔したアカイトのマスターが唐突に言うから。
「げほ…っ」
飲んでた珈琲が変なとこに入った。
会話を遮る着信音が鳴ったのは、ついさっき。
「え?誘…っ??!」
ただならぬ空気の中、手渡される通話中の携帯。
混乱したまま耳に当てた、その先で。
『無事返して欲しくば、発泡酒を1ダース用意し』
「マスター…」
『あれ?カイト?』
聴き慣れた声、と。
その後ろで何やら煩いアカイトの声。
「要求は何だって?」
目の前には楽しそうな、人質のマスター。
「…発泡酒1ダースだそうです…」
俺はどっと疲れた。
同じ手は二度と食わない、って毎回思うのに。
なんでこうも毎回、このひとたちの戯言に引っ掛かるんだろう…あああもう…!
ってひとり憤ってる間に、携帯越しの会話が外からも聞こえて、響くチャイム。
通り過ぎ様、俺の頭を撫でたアカイトのマスターが音源に向かう、その背を見送って。
「偶然そこで会ってさーほら、ヤニ」
「おー丁度切れてたんだよ」
「おまえ、こいつの為にもタスポ作ってやれ」
「な…っ言うなって言ってんだろ!」
直ぐに騒がしくなった玄関先へ、今日こその文句を言うべく立ち向かった。
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