赤マスタとカイト
「カイト、緊張しなくていいから」
寛いで、と声を掛けても、崩さない姿勢に笑って。
我が家の暴君とは大違いだと、感嘆した午後3時。
隣に住む腐れ縁宅からカイトが遊びにやって来た。
「今日お仕事、お休みだったんですね」
お邪魔してすみません、と頭を下げるカイトを慌てて制する。
「いや、それよりあいつどこ行ったんだかな…」
普段礼儀のれの字も無い奴といる所為か、どうも調子が狂うな…
そんでもって渦中のアカイトはと言えば、目を離した隙に居ない、し…俺の財布も無い。
コンビニか?あ、ついでに煙草頼めばよかった。
「…直ぐ帰って来ると思うんだけど」
「はい」
素直に笑顔を返されて、嬉しくないわけが無い。
髪や瞳の色は違えど、顔の作りも体格も全く同じなのに。
こうも中身が違うものかと、このコと会う度毎回感心する。
「何か淹れようか、珈琲飲める?」
「あの、お、お構いなく…」
「いいから座ってて、あ、多分アイス、あるよ」
ソファから腰を上げた俺に習って、腰を浮かせるカイトの遠慮を誘惑で制して。
「あ、ありがとうございます…」
思惑通りぱっと晴れる表情に笑った。
こんなにも打てば響く素直さはそりゃ可愛がりたくもなるな、と。
深みに嵌ってる友人に共感するしかなかった。
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