ぐるぐる!
「アカイト、俺仕事するからこっち来て」
布団を抜いたコタツ机で、ノートパソコンの画面を開いたマスターが言うから。
一々宣言すんな、と口を開きかけて、言われた言葉の後半に軽く混乱した。
「…何つった?最後」
「だから、ここ座って」
は?と聞き返した俺に笑ったマスターが、早く、と手招きする、けど。
「おわ…っ」
意味がわかんねぇと思ってたら腕を引かれた。
誘導されたのは机とマスターの間、で。
目の前で浮かび上がるWindowsの文字。
距離を詰めたマスターの胸に、俺の背がつく。
凭れかかるというよりは、か、囲われ…
「!?!」
「思いの他画面が見えないな…」
アカイト、もうちょっと沈んで、と頭上で聞こえて。
腰に回ってきた腕に身体を少し擦り下げられる。
今度は後ろ髪が胸についた、あたりで思考がフリーズした。
「…こら、おい息しろ」
けど直ぐに再起動した。
「体勢苦しい?」
「あた、当たり前だろ!」
別にそこまで辛いわけじゃない、が。
「ごめん少し我慢して」
反射的な文句に降る苦笑の声、目の前で鳴るキーボード。
グラフ、数値、おい、これ俺が見てどうすんだ、つか。
「おま、おまえ、何がしたいんだ!?」
「これ、明日までに作らなきゃいけないんだけど」
問いとは無関係の返答に深みを増した謎が、
「でもおまえにも構いたいんだよ」
続く言葉で一気に解けた。
「で、両立する方法を編み出した俺天才かもな…」
「馬鹿の天才だな…」
「うん。なんで今馬鹿つけた?」
マスターが苦笑した振動が俺に響く。
心底、呆れた、自分の内心に。
鬱陶しいと思うのに、退く気は起きない。
「好きだって言ってくれたら、効率、上がる気がするんだけど」
内で渦巻く矛盾に葛藤していれば、また馬鹿な催促が来るから。
「誰が言うか」
即答したら顎の下を掬われて無理矢理目が合う。
「これ、終ったら意地でも言わせてやるからな」
覚悟しとけ、と微笑んだマスターを間近で眺めて一気に体温が上がった。
カタカタと響くタイピング音と、乱された心音を聴きながら。
今直ぐ逃げたい衝動ともう少し留まりたい感情が、せめぎ合ってぐるぐるした。
end
アカイト版も!と言ってくれた方へ^^
書いたはいいけど無理があったよ…!笑
全く同じ設定のカイト版こちら
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