追走を追想
若さと言うものはいつでも可能性に賭けていて。

例えば、今目の上にあるものを取るのに、
視界の隅で待機しているあの椅子が必要だとは分かっていても。

出来る限り手を伸ばしてみたり、してる途中で。

「これ、ですか?」

いとも簡単に目的を与えられると無性に腹が立ったりする。

「〜…な、な、な…っ」

特に心身共に成長期の男の場合。

「あ、違いましたか?」

差し出したままの本を手に小首を傾げるカイトの仕草に、どきりとして。

「よ、余計なこと、すんな!」

それを誤魔化す為に声を上げたら八つ当たりになった。

「す、すみません…」

罪悪感は湧いてくるのに。

理不尽な非難を気にもせず、眉を落として微笑むカイトを見上げていたら。

悔しくなって、今に見てろ!と叫んで逃げた。





「なんです?急に笑ったりして…」

「いや…思い出し笑い」

指摘されて伸ばしてた指先が止まってたのに気づいて。

棚から引き抜いた本を手に振り返るとカイトが小首を傾げた。

変わらない仕草が過去とダブって懐かしさが込み上げる。

「教えて、くれないんですか」

「教えて、欲しい?」

口の端だけで笑って、返す。

「…は、はい」

そうするとカイトの頬が染まるのを、覚えたのはここ数年のこと。


「…そんなこと、ありましたっけ」

はぐらかすクセに懐かしそうに笑うカイトへ、

「あの時は本当に申し訳ないことを」

「あはは」

伝えた数年越しの謝罪に、また柔らかい笑顔が返る。

かわいいなぁと気持ちが動いたら、身体も動いた。

「…?マス、…っ」

少し屈んで、触れて離れる。
それだけのキスでいつも、面白い位狼狽に揺らぐ瞳に笑って。

「本当はずっとこうしたかった」

耳元に吹き込むと、咄嗟に掴まれてた肩の指がびくりと動く。

「カイトは?」

「ぁ…えっと…あ、う…」

真っ赤に染まった顔を覗き込んで答えを待つ。

追いつこうと必死になってたあの日々の葛藤も、
追い詰める愉しさを知ってしまった今となっては。

無駄じゃなかったな、と思えてまた笑った。


end
募マス箱より「職業:ぴかぴかの中学生、性格:ややいじっぱり、大好きなもの:KAITO!、年の差と身長差にいつもヤキモキする」マスターを書いてたら思いの外短くなってしまったので未来編をつけたらそっちがメインになる無惨な結果になってすみませんでした(一気読み)
き、寄付して下さった貴方様へ捧げます。ありがとうございマスター!^^

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