but not bad!
唐突な出会いってのは大概、別れだって唐突に来る。


力の入り過ぎた表情は強張って、への字に結んだ唇。
頑な瞳は真摯にこちらを見上げていた。

「…じゃあな、カイト」

「は、い…」

髪を梳いた途端、跳ねる肩。
何か堪えるみたいに、握り締められた拳がカイトの身体、左右で震える。

「元気で」

「…っマスタ、も」

「うん」

じわりと滲み出した青藍に、もう少し、と思った。

「何か合ったら電話、してきていいから」

会いには、来れないけど。
と足した言葉は核心に触れたらしく。

「う、う…っ」

ぶわりと溢れた大粒の雫。
量の多い睫を濡らすと後はもう、瞬きと共にぼろぼろ落ちた。

玄関先、辺りに注ぐ太陽はどこまでも柔らかく暖かい。

「ますたー…明後日、帰って来るんですよね…?!」

見事なまでの出張日和、だよ、なぁ。

「帰って来るよ?」

「じゃ、じゃあっ何で、そんな大袈裟に…っ」

いよいよ本格的に泣き出したカイトに笑って濡れた頬に口付ける。

「あーごめん、ちょっと泣いて欲しかった」

から、オーバーにしてみた。すまん。
出来れば『行かないで下さい!』とか言ってくれても構わない、とか思ってる。

「が、我慢してた、のに、ひどい、です…っ」

「申し訳ない」

たかが二泊三日の単発出張。
明後日にはまた会えると重々に分かってはいるんだけど。

「…何か無くても電話、してきていいから」

「うう…っ」

いってらっしゃい、と涙混じりに振られる手に手を振り返す。

自分で泣かせたクセに、危うく貰い泣きしそうになった目頭を密かに押さえて。

恋しくなって電話してしまうのはたぶん俺の方だな、と近い未来に自嘲した。


end
募マス箱より「カイトが可愛くて可愛くて仕方ないヘタレ」マスターでした。
この後電話するタイミングが被って通話中になってお互い慌てたらいいと思いました。はい笑
寄付して下さった貴方様へ捧げます。ありがとうございマスター!^^

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