止まない病
「…っマスター」

ベルトへと触れた途端、制止が掛かって。

合わせた瞳がもう潤んでる。
溜息をつきたくなって耐えた。

「…カイト、指、邪魔」

代わりに漏れた苦笑で催促してみれば、青藍が羞恥に揺れる。

「ま、ますた…あの…っ」

余りにも緊張されるとこちらの勢いも削がれる気がして。

「何も捕って食おうってわけじゃ…」

ある、か。あるな。

宥めるために掛けた言葉は逆効果に終わった。

あ〜もう、いいや。
びびらせとけ、と半ば投げやりになる。
大体がして、自業自得だろ、今回は。

最早抵抗とは言い難い、添えてるだけの手を捕って、指先に口付ける。

「…っ」

驚きに見開かれた瞳にすら駆り立てられる、視界の隅に。

捉えた封筒、『先生へ』の宛名、開かれたままの手紙。

アナログな告白が事の発端。

隠す理由も無いそれがカイトの目に入ったのは偶然で。

まさかそんなに驚かれるとも動揺するとも。
まして疑われるなんて、思っても、無かった。

「…俺が、生徒と、何だって?」

「あぅ…」

「手、出すと思った?…おまえがいるのに?」

責めるつもりで出した声音がいつの間にか、
あやすトーンになってる自分に呆れて少し笑う。

滲む青藍、ゆっくり落ちた水滴は初めの一粒だけで。

あとはもうぼたぼたと止め処ない。

「マスターすき、です…っ」

「…知ってる」

こちらにはもう、充分過ぎるほど伝わってる。

「けど、カイトはよく分かってない、よな」

おまえの一挙一動に、どれほど、俺が揺さぶられてるか、なんて。


火照った頬は涙の味。

「…分からないなら、教えてあげるよ」

解いたベルトのバックルがやけに冷たく感じたりして。

泣かせたくない、と思うほどに鳴かせたくなるのだから。

この感情が病だ何だと比喩されるのも、あながち間違っちゃないなと思った。


end
募マス箱より「年齢が20代前半な高校教師」マスターでした。
見事なまでのネタクラッシャー申し訳ない!
寄付して下さった貴方様へ捧げます。ありがとうございマスター!^^

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