episode20



「佐久間、入るぞ」

そう言ったと同時に俺は部屋に入った。

「不動か」

「風丸も心配してたぜ」

「ごめん…」

「まぁ俺が悪かった訳だし」

「…?不動は悪くないぞ」

「は?昨日の事じゃねえのかよ」

「違うって朝のミーティング前に言ったじゃん。…でも不動は悪くないよな。それなのにあんな態度とってごめん」

じゃあやはり鬼道なのかと聞きたかったが今は仲直りが優先だ。

「じゃ、仲直りということで今日の事はナシだからな」

「ありがと、不動」

俺はそう言った佐久間の唇に己の唇を重ねた。

「な!何すんだよ」

「仲直りのキスって事でいいだろ?」

「良くない、やめろ変態!」

「変態で結構」

今日の事がなしで、佐久間も昨日のアレが嫌ではないなら続きをやるしかないだろう。仲直りしたばかりだろうと何だろうと俺は佐久間相手にブレーキが効くほど良い子ではない。

俺は佐久間のジャージのジッパーを下ろした。

「やめろっ!」

佐久間が本気で抵抗してきたが、すぐ大人しくなると思い、構わずジャージを脱がせた。ユニフォーム姿になれば首筋が露になった。
そこには俺が昨日付けた痕が―――

あれ…?俺、こんなに付けたっけ?

確かに付けた事は付けた。ただこんなにした記憶はない。流石に目立つと可哀想だと思って一つにしたはずだ。

「佐久間、これ…」

佐久間は俺の視線が自分の首筋にあることに気付くと抵抗をやめた。

「ごめんなさい…」

そう言った佐久間の声は震えていて、大きな目からはポロポロと涙が溢れた。

「おいどうしたんだよ」

俺が慌てて身体を抱き起こすと、佐久間はそのまま声を上げて泣き出すものだから、俺は思わず抱き締めてしまった。

「なぁ、一から話してくれよ。」

暫く髪を梳かすように撫でてやると、大分落ち着いてきたようでぽつりぽつりと話し始めた。


――――――



世の中には信じられない事と信じたくない事が存在する。
そしてその両方をもつ事だってある。

佐久間の話を聞き終わった時、俺は鈍器で頭を殴られたような衝撃を受けた。

とてもじゃないけど信じられない話だ。
ただあの日一番最後に佐久間と居たのは鬼道であり、何より佐久間がそう言うのだから事実に違いない。

佐久間はごめんなさいとまた俺に謝った。

「俺が好きなのは不動だから…初めては不動にしようって決めてた。それなのに―――」

ずっと鬼道に服従していた佐久間の事だ、逆らえなかったんだろう。

「俺、汚いよな…鬼道さんとはいえ好きでもない人と寝てさ。自分の身体一つ守れなくて」

「もう何も言うな。お前は汚くなんかねぇ」

俺がそう言って強く抱き締めると再び声を上げて泣き出した。

「守ってやれなくてごめん…」

佐久間が俺の体に回した腕の力が強まる。俺もそれと同じくらい強く抱き締めた。


もうお前を離さないから