episode18



俺は今、凄まじく機嫌が悪い。正式には昨日の夜からだが…

昨日、いつもの場所に行ったら他のメンバーがいちゃついていた。人の待ち合わせ場所で仲睦まじくしているメンバーに苛立ちを覚えたが、佐久間が部屋に行こうなんて言うから仕方なくついていった。



「ったくあそこは俺たちの場所なのに勝手に使いやがって」

「まぁしょうがないよ。いつかは誰かが使うとは思ってたし」

普通の部屋もたまにはいいだろ?
なんて言いながら呑気に笑う佐久間。

全然良くねぇよ…

今までは廊下という公共の場所だからこそブレーキが効いていた。
それをいきなり佐久間の部屋で二人きりにさせられて…何もしないはずない。

アイツは鈍感を絵に描いたような奴だから何も考えずに俺を部屋に入れたのだろうが、これで何もするなというのは生殺しに値する。

俺と佐久間はまだキス止まり。確かに付き合った日にちを考えれば妥当かもしれない。だからと言って俺は我慢する気もなくもっと進展したいと思っている。キスだって俺にしては相当我慢したほうだ(そもそも、佐久間が俺を好きになるずっと前から俺はアイツが好きだったし…)。ただ、我慢し過ぎた反動らしく、キスだけじゃ足りなくなっていた。
もっと佐久間が欲しい…
アイツは俺のものだって証明したい。

残念ながら俺は紳士じゃないから我慢できないものはできない。


俺は佐久間に軽くキスをしてからひょいと身体を持ち上げてベッドに運んだ。

「ちょっ…不動!?どうしたんだよいきなり」

佐久間は突然の事で驚いて手足をばたつかせたがそれに構わずベッドに押し倒した。

「待て待て!意味分かんないだけど!!」

分かんないとか言いつつ顔が赤い。薄々気付いている証拠だ。こっち系の事は吹雪辺りが入れ知恵してるからそこだけは感謝したい。


「不動、どういう事なんだよ」

「分かんねぇか?お前が欲しいんだよ」

俺がそう言うと佐久間は急に大人しくなり、恥ずかしそうに俺から顔を背ける。
そんな佐久間が可愛くて俺は唇を重ねた。

すると心の準備が出来てないだとかなんとか言い出して、しまいには我慢しろとまで言われた。
無理に決まってるだろ。好きな奴を押し倒しておいてそこで止めるような奴がいるわけない。そんな奴が存在するなら俺は是非ともお目にかかりたい。

そういう訳で止められるはずもなく俺は佐久間の首筋にキスを落とした。

「んっ…」

さっきまで嫌だとか言っていたくせに今度は甘い吐息を漏らして俺に抱きついてきやがった。

「そう言ってる割には嫌そうに見えねぇな」

そう言うと煩いとまた生意気な口を聞くが、俺の背中に回した手は離そうとしない。

痕がつくように少し強めに肌を吸えば甘い声をあげてぎゅっと俺を抱き締める。

そんな佐久間にすっかり盛ってしまった俺は再び首筋に唇を這わせた。


その時だった


ガチャ

鬼道が入ってきた。



恐らく14年生きてきた人生の中で一番びっくりした。それは佐久間も同じなようで覆い被さっていた俺を思い切り突き飛ばした。

佐久間は完全にパニックを起こしたようで、鬼道にトレーニングだとか言い始めた。
どう言い訳したって無理だろう。
男同士とはいえベッドで抱き合ってたらそれはもう弁論のしようがない。

まぁ今は見られたとかそんなのは関係なく、前戯の最中に止められた事の方が俺にとっては一大事だった。

だが佐久間は鬼道を追い返すつもりはないらしく、言い訳しながらも鬼道を部屋に招き入れていた。



完全に空気な俺


おい、続きはどうなるんだよ…

そんな事言えるはずもなく、この状況に耐えられなくなった俺は自室に戻った。

この後俺がどうなったかなんて簡単に想像つくだろう。

あんないい感じになって、さぁこれからというときに止められる。完全に生殺しだった。
欲情したままの俺は他に捌け口になる相手もいない訳で、一人惨めな夜を過ごすことになった。


そして今に至る…

何でこの俺がこんな思いをしなきゃならねぇんだ。昨夜を思い出すと俺の苛々はピークに達した。

時計を見るともうすぐミーティングの時間だった。佐久間や鬼道と顔を合わせるのは気まずいが出ざるを得ない。

俺は深いため息を吐いてミーティングルームに向かった。