時制はFFIです




人生というものは予想がつかないものだ。
誰がこんなことになると思っただろうか





秘密の願い







何の前触れもなかった。
ただいつものようにイナズマジャパンのメンバーと一緒に練習に明け暮れて普通に寝たはずだった。

ただ変な夢を見ただけで―――



「やあ佐久間君、久し振り」


何故かアフロディが出てきた。


「あー…久し振り、なんか用?」



夢の中だったから適当に返事をした記憶がある。




「今日君のもとにやって来たのはね、君の願いを叶えてあげようと思ったからなんだ」


「ヘー」


「随分素っ気ないんだね、まぁいいや。僕は神だから君の中に眠っている『密かに望む願い』を叶えてあげるよ。今は君自身気付いてない願いだけどいつか喜ぶよ」


「そりゃどうも」



まだ神なんて言っていたのか。


「お安いご用だよ。僕は可愛い子が好きだからさ」



君はVIPだよ、と大層ムカつく言葉を残して去っていった。
俺は可愛いとか言われるのが大嫌いなんだから。
あっ、鬼道に可愛いって言われるのはいいや。実際言われてるし。


まぁそんなこんなで朝目覚めたら単なる夢だと分かったはずだった。
なのに―――




「佐久間おはよう」


「おはよー」


最初に風丸にあったので挨拶を交わした。しかし風丸は俺の身体をジロジロ見ると



「なんかお前…おかしくない?」


そう言った。


「何が?」


「なんかこう…全体的に丸くなったというかなんというか…ちょっと失礼」



今度は俺の胸をそっと触った。
触れたと同時に俺たちは叫ぶことにならざるを得ない。


「佐久間!!お前女だっ―――」


「バカ!ちょっと黙れ」


「…ごめん、けど何で?」


「俺が聞きたい」


「もしかしたら朝目覚めたら女になっちゃいましたってパターン?」


「そんな事有り得るのか…」


ふと昨日の夢を思い出した。
あれは正夢だったのかもしれない。
アフロディ許さん。



「兎に角みんなには黙っていてくれ。特に鬼道や不動には知られたくない」


「分かった。まぁお前そのサイズならブラとかいらないだろうし…イタッ」


「煩いっ!!」



失礼な風丸の頭を叩いておいた。


悪かったな、胸なくて






――――









やがて朝食の時間になり、皆が集まってきた。


木暮が音無に悪戯したらしく二人は鬼ごっこ状態だ。


俺はバレないように極力人を避けていたがキョロキョロと周りを見ていたのがまずかったらしく不動に突っ込まれた。



「お前何で朝から挙動不審なんだよ」


「べ、別に……何でも…な…い」


「嘘吐け」


「不動には関係ないから、あっち行けよ」




すると鬼ごっこに夢中になっていた音無が勢いよく俺にぶつかり、俺はバランスを崩してそのまま不動に抱きつくように倒れた。



「大丈夫ですか佐久間さん!!ごめんなさい」


あわてて音無が俺たちに駆け寄る。


「おい、俺に大丈夫の言葉はないのかよ」


「不動さんにとってははラッキーだったと思ったので」


「確かにラッキー……って変なこと言わせんな」


「いいから早く離せよ」


バランスを崩したまま体を離そうとしたらそのまままた倒れてしまった。
さっきよりも思い切り身体が密着してしまうと不動はとうとう俺の身体に気がついてしまった。


「さっきも思ったけど…お前やっぱり女だったのかよ!」


「えぇぇぇ!!佐久間さんって女の子だったんですか!?」



コイツらのせいでみんなにバレた



すると鬼道が走ってきて一先ず不動をぶっ飛ばした。


「俺の『彼女』を抱き締めるなんて良い御身分だな」


「仕方ねーだろ!事故だったんだから」


「それにしてもまさか女だったとは」


「こんな胸じゃ分かんねーって」


「なんだと…」



AAAじゃね、と馬鹿にしたように笑う不動に殺意が沸く。

不動コロス



すると鬼道が俺の腕を引っ張った。一緒に来いって事らしい。


鬼道の部屋連れて来られ、二人で向き合うように座った。



「事情を話してくれないか」


話して分かるものなのか



「信じられない話なんだけど」



俺は昨日の夢の話から話し始めた。






「要するに今日女になったって事か」


「ああ」


「確かに信憑性に欠ける話だな」


「…」


「けど、お前がそう言うなら信じるよ。第一俺はずっとお前と付き合ってたんだぞ?」



男だった事くらい分かる、鬼道はそう言って優しく頭を撫でてくれた。



「男でも女でも佐久間は可愛いから問題ない」


「……。複雑だ」


「良いじゃないか」


「嫌だよ、俺だって気持ちは男なんだから」



するといきなり押し倒されて激しくキスをされた。
咥内を舌で犯すように責められれば頭がぼうっとしてくる。
それでも鬼道とのキスは気持ち良くて応えている自分がいた。



やがて唇を離せば鬼道はクスリと笑い、



「佐久間、男ならそんな顔はしないぞ」


そう言って今度は頬に軽くキスをした。



いやいや、男だって好きな人とキスするのはいいに決まってるじゃん。


って言おうか迷ったけどなんか何されるか分からないからやめよう。



「なぁ鬼道、もし俺がこのままならどうするんだ?」


「正式に結婚するかな」


「はい?」


「お前が女なら何も困ることはない。そのまま鬼道家に嫁ぎに来い」


「えー!?」



なんかこんなタイミングでプロポーズされてる。
押し倒されたまんまだし


しかも俺が嫁ぐんかい。
女ばかりの佐久間家に俺が生まれ、「次郎がいるから会社は大丈夫ね」と微笑みながら俺に言った母さんの顔が浮かぶ。
すみません母さん、親不孝者で。
まぁ男の時から鬼道と付き合ってる時点で家系が途切れる事は分かってたけど…


先祖代々の佐久間さんごめんなさい




なんて考えていると名前を呼ばれ、我に返った。



「佐久間、返事は?」


「はい……?」


「そうか、じゃあ結婚してくれるんだな、良かった」



あ…プロポーズの返事だったのか。
すると鬼道は優しく俺を抱き締めた。



「本当に良かった。お前が女になってくれれば父さんにもお前を理解もらえる。それにお前の家にだってこれなら迷惑かけない」

俺たちの恋愛は個人のものだけではないから




そうか、鬼道も気にしてたんだ。鬼道も俺も会社や家を継がなくてはいけないから。

勝手な恋愛はできない

でも好きな気持ちは変わらない

そこまできて気が付いた。

アフロディが言ってた「密かに願っている願い」

俺は心の片隅でこうなることを望んでいたのかもしれない。



俺は鬼道を抱き締め返し、こう言った。




「俺は鬼道有人と結婚します」





めいこ様リクエストの『後天性にょ佐久の鬼佐久』でした。めいこ様のみお持ち帰りOKです。
ちょっと不→佐を入れたのは私の趣味だったり…←
このあと婚約しちゃえばいいと思います\(^o^)/
照美出てくるとか超次元設定ですみません。
リクエストありがとうございました!