episode16



「なぁ佐久間」


「はい?」


「お前は俺に尽くしてくれるって言ったよな?」


「ええ。今もそのつもりです」


「俺の為なら死ぬ覚悟もできてるとも言ったよな?」


「はい。……って鬼道さんいきなりどうしたんですか?」


「だったら…」



俺は心配そうな顔をしていた佐久間の唇を強引に塞いだ。


突然の事で佐久間の身体はビクリと震える。

そんなのはお構い無しに俺は無理矢理唇を開き、舌を入れる。
すると佐久間は抵抗して唇を離した。



「や、めて…下さい」


「そんなに俺とキスするのが嫌か」


暴れる佐久間を押さえつけ、ベッドに押し倒した。


「何するんですか!?離して下さい!!」


佐久間は必死に逃げようとするが俺が押さえつけているせいで身体は動かせない。
俺はそのまま首筋に舌を這わせた。


「鬼道さん!やめてくださいって!!」


甘い声も一切上げず、キッと俺を睨みそう言った。でもやめる気はない。


「そんなに不動が好きか?」


「えっ?」


「俺より不動がいいのか?」


「鬼道さん?」


「俺がどれだけお前が好きだったか。どれだけお前を愛してたか。お前は分からないだろ?」


「それって…」


「ああそうだ。俺はお前を愛していた。何をしてでも傍にいて欲しかった。だからお前の学費を援助したんだぞ?」


「そ、んな」


佐久間の抵抗はピタリと止まった。


「お前は俺の事を友達や仲間と思っていたとしても……俺にそんな感情はなかった」


「…っ」


「俺はお前をずっと前から愛していたのに………何で不動なんだ」


「それはっ…」


「アイツなんかのどこがいい。お前は自分のされたことを忘れたのか」


「それは昔の話です。過去に色々あったとはいっても――」




俺は不動が好きなんです








震えた声で恐る恐るそんな事を言う佐久間に俺は怒りを露にした。



「ふざけるな、お前は俺のものだ!!不動にも、他の誰にも渡さない!」


俺は不動が付けた痕よりもずっと強く残るように何度も首筋に唇を付けた。その度に甘く切ない吐息が漏れる。


「俺にも見せてくれよ。お前の夢中な顔」


「鬼道……さ、ん。」


俺はそう言ってシャツの中に手を入れた。
すると大袈裟なくらい身体が跳ねる。


「あっ…」


「随分感度がいいじゃないか」


「き…どう、さん……やめ――」


恐らく感じやすい体質なのだろう。その分羞恥に耐えられないのか必死に俺にやめるよう頼む。




それでも――


「俺を裏切るのか?」

そう言えば首を横に振り、俺の愛撫にじっと耐える。
馬鹿だな、佐久間は。
俺には逆らえないのなんて初めから分かってるくせに、そして俺がやめない事だって本当は知ってるはずだ。


抵抗しないのに気を良くした俺は服を脱がせ、佐久間の肌に顔を埋めた。


「綺麗だぞ、佐久間。滑らかで吸い付くような肌だ」


不動はこんな風にはまだ触れていない。こんな佐久間を知っているのは俺だけなんだ、そう思うと優越感が沸いた。

止まらなくなった俺は今まで抑えてきた感情が爆発し、本能のままにその華奢な身体を犯していった。


愛撫が下半身に移動した時、小さく悲鳴にも近い声が上がった。


「大丈夫、痛くはしないから」


そう言って優しく頭を撫でれば佐久間は悔しそうに唇を噛み締めた。


「ローションとかないか?」


「………」


「往生際が悪いぞ、少しは諦めたらどうなんだ」


もしかしたら途中でやめてくれるとでも思っているのか、佐久間は黙っていた。

ダメだよな、そんな甘い考え。
お前は俺を裏切ったんだ。それを簡単に許してもらおうだなんて都合が良すぎる。

俺は一度行為を中断し、『滑りをよくするもの』を探した。佐久間は縛ったりせずそのままなのはこいつが逃げ出せない事なんて俺には分かっているからだ。
まぁこんな格好じゃどうしようもないよな。

化粧水やら櫛が無造作にしまってある引き出しを漁れば俺は思わず笑ってしまった。


出てきたのは性交用のローション。



「何だ、あるじゃないか。不動とはそこまでする仲だったんだな」


「違います…それは俺のじゃ…ヒロトが勝手に」


よく見るとまだ未使用であった。
ヒロトの名前が出たということは恐らく彼が佐久間に渡したのだろう。
あいつは人の恋路が好きだから、恐らくここの二人のところにもちょっかいを出したって事か。




応援されている。





今はそれすらも憎たらしい。

今更ながらにヒロト達がこいつらと仲良さげに話していた事を思い出し、俺は舌打ちをした。



「お前達を応援しているヒロトも、まさかこんな事になってるなんて思ってないだろうに」


皮肉を込めてそう言い放つと泣きそうな顔で俺を見る。


俺はそんな佐久間をよそにローションを手に絡め、その指を佐久間の後孔に宛がった。



「不動は残念だったな、こんなお前を見れないんだから」


そのまま指を差し入れれば艶やかな声が上がる。
痛みと快楽が入り交じったような表情が堪らない。

それに気を良くした俺が指を増やせば更に声が上がってしまい、佐久間は慌てて自分の手で口を塞いだ。



「そうしないとお前がこんなことされて悦んでいるのが不動にバレるからな」


「っ…ん」


佐久間は静かに首を横に振った。
悦んではいないと、そう言いたいのか。



「じゃあ今から不動を呼ぶか。それでお前が悦んでいるかどうか見てもらえばいい」



我ながら酷な事を言ったと思う。
俺がそう言い放てば信じられないと言わんばかりに俺を見た。



「不動には…言わないで、下さい」


「奇遇だな俺も不動には知られたくない」


「だったら―――」


「だったらお前は大人しく抱かれていればいい」


「…!」


再び指を入れて入り口を広げ、慣らした事を確認すると、今度は自身を宛がった。

「ひっ……うあぁぁぁ!!やめ、嫌ぁぁ!!」



何度も泣きながら懇願されたが俺はやめない。
俺を裏切った佐久間が悪いのだから。
だからちゃんとこうして俺の気持ちを伝えれば佐久間は良い子だから分かってくれるだろう。
自分の過ちに気付くはずだ。


「お前は俺のものなんだからな」



誰にも渡さない





俺はそう言って佐久間と身体を繋いだ。