episode11



「飯終わったら浜辺に来い」



ミーティングが終わった後、食堂に向かっていたらいきなり不動にこう言われた。


浜辺に来てどうするんだよ……まさか決闘か!?


いや、仲良くなったからそれはないよな。


じゃあ何で…



「なぁ不動、話って何だよ。ここでいいじゃん」



食堂で後ろの方の席に座っている不動に聞くと


「うっせー、今その話すんな。とっとと席着いて飯食えよ」


機嫌が悪いのか怒られてしまった。

俺に怒ってるのか?

仕方なく言われた通り席に着いた。
イナズマジャパンのメンバーは特に席を決めている訳ではないが、大体座るメンツと場所が決まっている。

不動は一番後ろの席だし俺は一番前で鬼道さんの隣。

食事中何回か不動を見たがいつも通りに食事を摂っていた。


「どうした佐久間。さっきから後ろばかり見ているが…」


「な、何でもないです」


「それならいいが…」



鬼道さんに心配かけてしまったのでなんとか気にしないようにする。

それでも気になった俺は早めに食事を済ませて宿舎を出た。


「不動…?」


不動は人を呼びつけておいて砂浜でリフティングをしていた。

ただいつもみたいに続かず、数回やってはミスの繰り返し。暫く見ていたらボールが俺の方に転がってきた。



「何だよ、いたなら早く来い」


「下手くそ…」


「うるせー、俺だってミスすることもあるんだ」


「ふーん。っていうかさ、星すごい綺麗なんだけど。もしかしてこれを見せる為に呼んだのか?」


「馬鹿、そんな用でいちいち呼ばねぇよ」


「だったら…」


「いいか?一度しか言わねえからよく聞けよ」


すると不動は俺の肩を掴んでまっすぐ俺を見据え、口を開いた。




「お前が好きだ」


「ヘ?」



えっ!?なにそれ、それは告白ってやつなのか?俺は今告白されたのか!?俺は完全にパニック状態に陥っていた。
不動はそんな俺を自分の胸に引き寄せた。前は俺の方が背が高かったのに今じゃ完全に抜かれている。


「不動…?」


「いつも一生懸命なお前を見てたらいつの間にかすっげー好きになってた。これからは鬼道じゃなくて俺を見てくれ」


いつになく真剣な不動に、俺の心拍数は確実に上がっていった。
でも俺は素直じゃないから…


「俺についてこい」


そう言った不動を軽く押した後、


「お前が俺についてこい」


舌を出してそう言ってやった。
そして砂浜の上を走り出すと

「はぁ?ふざけんな。お前が俺について行くんだよ」

と言って不動が追いかけてきた。


砂浜で追いかけっこなんてカップルみたいだ。


「バーカ、遅いんだよハゲ!」


「調子乗んな女顔!!待てって言ってんだろ」


といっても会話が酷い…。でも憎まれ口を叩いてないと顔赤くなりそうだし、そんなとこ不動に見られたら恥ずかしいし…


緊張していたせいで早めにスタミナが切れるとあっという間に不動に捕まってしまった。


「俺に捕まるんじゃついてこいなんて言えねぇな〜」


「煩い不動…」


「返事は『はい』で受け取っていいんだよな?」


「当たり前だ。俺も好きだったんだから」


俺がそう言うと大袈裟なくらい不動は驚いた。


「マジかよ!?」


「そんなに驚く事か?」


「てっきりお前は鬼道が好きなんだと」


「鬼道さんはそういう好きじゃないぞ」


「鬼道は主人として好きなのか?それとも友達としてか?」


「本音を言えば後者かな…。でも仕方ないんだ。もう友達には戻れないから…」


「寂しいか?」


「うん…」


「ならこれからは俺がずっと側にいる。お前に寂しい思いなんか絶対させねぇから…」


不動はそう言ってまた俺を抱き締めてくれた。
さっきよりも強くて苦しかったけどその分嬉しかった。

ライオコット島の空に浮かぶ満天の星は本当に綺麗で、抱き締められたまま空を見上げれば、頭がクラクラする。


「不動…星、すごい綺麗」


「お前の方が綺麗だとか言って欲しいのか?」


「そんな訳ないじゃん。不動が言ったら笑う」


「頼まれたって一生言わねぇよ」


喋るとどうしても素直になれない。それでもお互いが身体を離そうとしないのはもっと一緒にいたいという証拠だった。






――――――――



この日から、俺と不動は恋人になった。
翌日には嬉しくて風丸に即行で報告した。


「そうか、おめでとう佐久間」


「サンキュー」


「やっぱ思った通りだったよ」


「予想ついてたのか!?」


「誰でも分かると思うぜ」


「そうなのか。みんな天才だな。あ、でもさ……」


「ん?どうした?」


「こうなると俺たちはホモになるって事だよな…」


「今更気づいたのかよ!まぁそうなっちゃうけどさ、このチームは付き合ってる奴結構いるから大丈夫だよ」


「そういやお前もそうか」


「まぁな」


そう思って見ればいちゃついてるメンバーが結構いる。ただこんなあからさまはちょっとな…。


人前でそういう事をするのは苦手なので、俺たちは就寝前に宿舎の隅で会うことを決めて毎日こっそり逢瀬を楽しんでいた。


兎に角毎日が幸せで、楽しくて仕方なかった。