episode10
最近ボーッとしたりどきどきしたりすることが多くなった。大丈夫か俺…。変な病気じゃないといいけど。
「佐久間」
「不動か。どうした?」
「いや別に、なんかお前がいつもみてぇにボケーッとしてるから呼んだだけだ」
「なっ…俺はボケーッとなんてしてない!」
「嘘つけ。休憩の時とかミーティングの時とか食事の時とか。最近お前練習以外ずっとボケーッとしてるじゃねえか」
すると風丸がひょっこり会話に入ってきた。
「へー、不動って佐久間の事よく見てるんだな」
「ば、馬鹿!ちげぇよ!!」
「だってずっと見てなきゃそんな事分からないだろ」
「不動は俺を見てるのか?」
「んな訳ねえだろ!勝手に勘違いすんな女顔共」
「あー!!女顔って言った!!」
「俺と佐久間に謝れこのバナナ!!」
誰が謝るか。そう言って不動は行ってしまった。
「素直じゃないな〜不動は」
風丸はやれやれとため息を吐いた。
「謝らなかったのは確かに素直じゃないよな」
「えっ!?そこ?」
「他になにかあったか?」
「いや、何でもない」
他にあったかなと思い返してもやっぱりないので気にしなかった。
風丸は代表入りしてすぐに仲良くなった。お互い似たようなものを感じたんだろう。お勧めの化粧水の話とかよく効くトリートメントの話とか、他のメンバーには出来ない話も出来るので楽しかった。
するとさっきまで黙っていた風丸が思い出したように口を開いた。
「不動さ、最近変わったよな」
「そうか?」
「ああ。特にお前と仲良くなってからはすごく変わったと思う。なんとなく穏やかになったというか優しくなったというか……佐久間もそう思うだろ?」
「え、あ……うん…」
「お前も素直になった方がいいぜ」
風丸はそう言うと俺の肩をポンと叩いた。
「俺が素直になるのか?」
「そうだよ。だって佐久間は不動の事が好きなんだろ?」
「えっ!?そ、そんなことない!!俺はただ不動の事考えるとドキドキしたり顔が赤くなったりするだけだぞ」
「いやいや、それが恋だろ。そういやお前は恋愛経験ないんだっけ?うん、まぁそれが好きってことなんだよ」
「そうだったのか…」
俺は十四歳で初めて恋をした。
そっか、今までの変な感覚は恋ってやつだったのか。
「協力してくれよ、風丸!」
「えっ……俺、絶対いらないと思うけど………まぁいいや、分かった」
そんな話をしていると練習が始まり、俺と風丸はグラウンドに向かって走っていった。