episode8



佐久間は鬼道のペット



俺はペットなんかじゃない。鬼道の親友なんだ。今まではそう言えた。

でも今は否定できない立場にある。


理由は俺が鬼道さんに助けられたから。もし鬼道さんがいなかったら俺は帝国学園にいることはできなかった。


金銭的な問題に関わってしまえばもうそれは友人関係とは言えなくなる。あの日を境に鬼道さんは俺の親友から主人になった。


ただ何をさせるのかと思えば俺自身の事ばかり。髪を伸ばせとか肌の手入れをしろとか仕事と一切関係ない命令だった。

そもそもFFに勝つためなんて理由は俺を納得させるための取って付けたような理由でしかなかったのだ。


何でこんな事をさせるのか、俺にはさっぱり分からない。でもペットとして側に置くなら俺は綺麗な方がいいということくらいは分かる。


まるでペットだな


周囲から投げられた言葉には否定の余地もなかった。


悲しくないと言えば嘘になる。


だけど恩人の鬼道さんのためなら耐えられた。あの日、俺は鬼道さんのためなら命も捨てる覚悟で尽くす事を誓った。もし鬼道さんが死ねと言ったら俺は分かりましたと言って死ぬだろう。


これが俺の人生


鬼道さんが俺を捨てるまで続く。

覚悟は決めたし鬼道さんのことは人間的にいい人だと思っているからこの関係も別に嫌ではない。


それでも一つ気になる事がある。


鬼道さんは……いや、鬼道は俺の事をどう思っていたんだ?俺が一方的に親友だと思っていただけなのか?

俺は最初からペットくらいにしか思われてなかったのだろうか。


今はもう聞けない。だけど気になる。

いつか俺が必要なくなった時に聞いてみようかな。





―――――――――



「佐久間!」


帝国時代の事を思い出していたら誰かに名前を呼ばれてハッと我に返り、見上げると―――




「不動…」


「何ボーッとしてんだよ」


「ちょっと昔のことを思い出してな」


「はぁ!?何じじくせーこと考えてんだか」


「煩いな〜、別にいいじゃん。不動には関係ないだろ」


「まぁいいけどよ。それよりもうすぐ練習始まるから早く来いよ」


「分かった」


俺は鮮やかな青色のユニフォームを着てアイツの後を追った。


ここにはかつていがみ合っていた不動もいれば俺の主人である鬼道さんもいる。

帝国の仲間がいなくて少し寂しくもあるが鬼道さんは親切だし不動とも最近和解できたので充実した毎日を送っていた。