episode4



「親友にさん付けなんておかしいだろ」

佐久間の台詞を思い出す。確かにおかしいと思う。俺だって源田にさん付けされたら変な気分だ。だが佐久間は親友じゃない。

佐久間は『友達』関連の言葉に酷く執着している。
以前本人から聞いたのだが、佐久間は帝国学園に入るまで友達が一人もいなかったらしい。どうやら大人しい性格と女子のような顔立ちが原因だったようだ。しかし帝国に入り俺と出会った事により仲間ができたとか。

確かに入学当初の佐久間は完全に周囲との関係を絶ちきっていて正直絡み難かった。それでも根気強く関わっていたらいつしか心を開いてくれたのだ。
つまり佐久間の初めての友達は俺であり、鬼道有人はずっと独りぼっちだった自分を変えてくれた存在だとか。

初めてできた友人というのはかけがえのない存在だとは思う。しかも成長した後も関わるとなるとそれは親友と呼べる存在であろう。俺自身源田は初めてできた友人であり今も付き合いがあるので親友だと思っている。

だが佐久間は違う。俺はアイツに親友に抱くには重すぎる感情を抱いてしまったのだ。そんな感情を友達に、しかも同性の奴に向けるなんて普通できない。それに俺は臆病だから、素直に気持ちを伝えられない。
しかし気持ちというのは伝えなければ伝わらない。

そんなこと分かっている。

佐久間を意識し始めた時から分かってた。

でももう限界なんだ。

いつかお前が離れていくと思うといてもたってもいられない。

こんな事を考えながら日常を送り、俺は自分の気持ちを持て余していた。


しかし転機は訪れた。