何があったのかは分からない。ただ分かることは佐久間と不動の仲が良いこと。



嫉妬



FFIで一緒に戦えることになって、鬼道は嬉しかった。そしてそれは佐久間も同じであると思っていた。だが、佐久間は鬼道に対する態度が帝国にいたときより遥かによそよそしかった。まさか他に好きな奴でも(例えば源田とか)できたのかと気になって源田に問い詰めたくらいだ。しかし源田は


「俺と佐久間がそういう仲じゃないのはお前もよく知ってるだろ?」


とあっさり否定された。更に


「佐久間はお前のこと好きだと思うぜ」


と言われる。それを確信してたら電話しないのにと不満を漏らしつつ電話を切った。ただの勘違いなら良いのだが、生憎鬼道の頭はそこまでおめでたくないのだ。

佐久間が帝国にいたときは鬼道鬼道といつもくっついてきて、自分でも情けないとは思ったのだが、チームメイトも呆れるバカップルと言われる程だった。
鬼道自身、佐久間は絶対に自分のものだと思っていた。だから雷門に転校した後も取られるという心配は一切しなかった。

だが世界大会になって変わってしまったのだ。始めは馴れないチームの中でそういうことをするのに抵抗があるのだと思っていた。しかしチームに馴染んできても態度が変わることはなく、それどころか重大なことに気付いてしまった。


誕生日プレゼントとしてあげたペンダントを着けていないのだ。佐久間はあれをものすごく気に入ってくれた。デートの時は勿論着けてくるし、学校や部活の時でも、いつもしてるんだと時々制服やユニフォームの中から出して見せてくれた。そんな仕草で、佐久間は自分のものなんだと鬼道は確信していたのだ。

それなのに、佐久間は昔のように見せてくれないし、首からは何もペンダントらしきものが見えない。つまりもう着けていないのだ。少し前に不動に相談したら、じゃあ本人に聞けと言われてしまったが、そんな勇気があればとっくの昔に聞いていた。鬼道は恋愛に関しては自分でもうんざりするほど臆病なのだ。


それでも話かければ嬉しそうに答えてくれるし、日本代表の中に佐久間に恋愛感情をもつ人はいなかったので、安心してまた少しずつ仲を深めていこうなんてのんきに考えていた。



今までは…………。




昨日、佐久間が不動と一緒に自主練をしたのだ。そこで何があったのか知らないが、今日二人は今まで対立していたのが嘘のように仲良くなっていた。そして不動は柄にもなく集中力を欠いていた。

佐久間は熱でもあるのか不動に触れる。不動は嫌そうな素振りを見せたが、顔は赤いしまんざらでもないのが態度に出ていて、どうみても照れ隠しにしか見えない。
佐久間は前からこんな風に振る舞う節がある。仲良くなると、恋愛とかは関係なくスキンシップをとってしまうのだ。これは恋人としては心配で、一回注意したものの、好きなのは鬼道だからと言われ、流された。佐久間は他人のことにはよく気が付くのに自分に関してはものすごく鈍い。だから相手に想われていても気が付かない。
今ものやり取りも、多分佐久間はそんなつもりはないのだろう。だが不動は佐久間に惹かれている。とうとうライバルが表れてしまった。


(不動とは随分強敵だな)


渡したくはない。けれど嫌われるのが怖い。そんな臆病な自分に呆れながらも、今日は少し勇気を出すぞと自分に言い聞かせ、不動と話している佐久間を練習に誘う。そうすれば不動はつまらなそうな顔をして鬼道を見る。


(そう簡単には渡せないな)

そして鬼道は何も知らない無垢な想い人と練習をするのであった。




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