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結局夜も眠れずに考えていたが分からず仕舞いだった。誰かに相談すれば早いのだか、不動の性格的にまず無理である。
そうこうしているうちに練習が始まってしまった。練習は全く集中できず、自分にパスがきても気付かなくて久遠監督にも怒られた。すると佐久間がやって来た。


「どうした不動、今日なんか変だぞ。体調でも悪いのか?」


「別に何でもねぇよ。」


昨日お前と話してからおかしくなったんだよ。そう言いたいのを抑えて素っ気なく答える。


「何でもないなんておかしいだろ、顔も少し赤いし…熱でもあるんじゃないか?」


そう言うと佐久間は不動の額に手を当てる。不動は昨日よりも更に緊張して体が強張るのが分かった。


「あ、不動の平熱知らないから分かんない」


「馬鹿かお前は!!気安く触んな」


「折角人が心配してやってるのに」


そんな言い合いをしてると鬼道が近づいて来た。


「佐久間、練習しよう」


「ああ、行こうぜ」


二人が行ってしまうと面白くない自分がいた。すると誰かに背中をバシッと叩かれ、驚いて振り向けば綱波だった。


「さっきから顔が赤いぞ〜。さては恋だな?」


「んな訳ねぇだろ!」


顔洗ってくるとだけ告げ、グラウンドを出る。


顔を洗っても火照るような熱さや身体中にはしった緊張は全く消えない。それどころかさっきの佐久間とのやり取りを思い出すだけで動悸のようなものがする。


(くそっ、なんでアイツなんかをこんなに意識しなきゃならねぇんだよ…)


他人にここまで感情を動かされてしまうのが正直悔しかった。アイツは俺に利用されるだけの奴なんだと言い聞かせても効果がない。


『さては恋だな?』


綱波に言われたことを思い出す。


(あり得ねぇって絶対)


認めなくなかった。偉くなる為に他人を利用してきた自分が誰かを好きになるなんて。しかも相手は自分が利用した中でも一番の被害者であり、他に好きな人までいる。不動にとっては最悪の相手だ。
だが、佐久間は本当に綺麗だと思う。勿論容姿もそうだが、どんな逆境の中でも努力して這い上がってきた根性や、好きな人を健気に想い続けるひた向きさも含めて全てが気高く美しい。
昨日からずっと佐久間のことを考えては身体が熱くなり、佐久間が鬼道と一緒にいるところを見ると苦しくなる。これが恋だというのなら―――――。


(もう認めるしかねぇのか………。)


自分の気持ちに気づいてしまい、気付かないフリなんてできない。


(俺は佐久間が好きなんだ)

不動は初めて恋をした。それは叶わない恋であることは百も承知だった。ただ、それだけで諦めたくないのだ。
自分が惹かれた彼のように。


不動はもう一度顔を洗い、練習に戻った。




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